ドローン制御技術の互換化目指し、ゼネラル・エレクトリックがドローン市場に参入

2014年に世界的ネット通販会社アマゾンが小型無人機を用いた配送システム「アマゾン・プライム・エア」の計画を発表したことは記憶に新しいと思います。

このような、無人の航空機のことを「ドローン」と呼びます。米軍が用いるような無人攻撃機もまた、「ドローン」の範疇に入ります。

従って、日本では“小型”無人航空機というように紹介されることも多いドローンですが、実際のところ小型というのはドローンである条件には入りません。

今アメリカでは、民間企業でのドローン開発・運用競争が始まっています。検索大手グーグルもドローン開発会社であるタイタンエアロスペース社を買収し、ドローンによる輸送システム「プロジェクトウィング」計画を発表しています。

そうした流れの中、新たにドローン市場への参入を発表したのがゼネラル・エレクトリック(GE)です。しかし、ゼネラル・エレクトリックの参入はアマゾンやグーグルのようにドローンを活用した新規ビジネスを開始しようというわけではありません。

ゼネラル・エレクトリックは、子会社のゼネラル・エレクトリック・ベンチャーズを通じて、ドローンの制御装置を開発しているエアウェア社への投資を決定しました。

エアウェアが開発するドローンの制御装置「オートパイロット」は、パソコンで言えばCPUとOSを合わせたようなシステムです。CPUはパソコンの脳に当たる部分であり、OSはCPUを制御し、動かしているシステムにあたります。

それと同様に「オートパイロット」はドローンの脳と指令機能を兼ね合わせている要となるシステムです。

現在Macを除く大部分の市販パソコンは、インテルのCPUとマイクロソフトのWindowsを搭載しており、メーカーが違ってもWindowsパソコン同士なら互換性があります。「オートパイロット」も同様に、ドローンの標準的な互換システムとすべく開発されました。

「オートパイロット」がドローンの標準システムになることは、ドローン開発会社にとってもメリットがあることです。すなわち、自社で制御装置を一から開発せずとも、「オートパイロット」があればドローンを開発できるわけです。

ゼネラル・エレクトリックが今回エアウェア社への投資を決めた背景には、拡大しつつあるドローン市場でゼネラル・エレクトリックがマイクロソフトのような立場になることを目論んでいるものと見られます。

アマゾンやグーグルがドローンを「輸送機」と見たのに対し、ゼネラル・エレクトリックはドローンを「空中センサー」と位置づけました。ゼネラル・エレクトリックがドローンを用いて目指しているのは、現在人間が行っている危険な場所での検査作業をドローンで代替することです。

ゼネラル・エレクトリックは、石油パイプライン、高圧線、風力発電機などの検査作業を4D(dull=鈍い、冴えない・dirty=汚い・dangerous=危険な・distant=遠い)業であるとして、この4D業を中心にドローン検査機を開発する計画を立てています。

「オートパイロット」は、CPUはARM、OSはリナックスを搭載した小さな箱のような機械。ARMは、イギリスのIT企業・ARM社が開発した省電力小型CPUであり、携帯電話やニンテンドーDS、iPodなどに搭載されているので、名前は知らず、見たことはなくとも実は身近な存在です。

リナックスはフィンランドのリーナス・トーバルズ氏が開発したOS。「オープンソース」つまりプログラムを公開して、誰でも自由に利用したり、改造できるOSとして、当初はマイクロソフトのような独占的手法に反発したプログラマーなどが使っていましたが、徐々に一般にも広まるようになりました。

リナックスは現在では一般のパソコンはもちろんんこと、サーバーや携帯電話、テレビやデジカメなどの組み込みOSとしても広く利用されています。

「オートパイロット」は現在のところ、固定翼機と垂直離着陸機用の「osフレックスパイロット」、その軽量版である「osナノパイロット」、マルチコプターつまり複数の回転翼を持つヘリコプター用の「osフレックスクァッド」の3種類が開発されています。「osフレックスクァッド」は、回転翼を8枚持つ「オクトコプター」まで制御できます。

エアウェア社はさらに「オートパイロット」搭載ドローンが取得した情報をクラウドサーバーにアップし、その情報にアクセスできるというクラウドサービスも提供しています。

「オートパイロット」が標準制御システムとして流通すると、どのようなことができるかというと、同じドローンでも違うアプリを使うことで、違った用途に用いることができます。例えば上記のような4D業の検査ではカメラを制御して撮影を行うとともにセンサーからの情報を収集するアプリ。夜間警備用には赤外線センサーアプリなど。

これはつまり、アンドロイドスマートフォンならアンドロイド用アプリ、iPhoneならiPhone用アプリと、共通したプラットフォームの機器であれば用途に合わせてアプリを選ぶだけで違う働きをさせることができるというのと同様、その用途に合わせてわざわざ違う機器を使う必要はないということです。

ところがドローン黎明期の現在は、共通プラットフォームがないため目的に合わせた別々のドローンを使わなくてはならないという状況にあります。エアウェア社が目指しているのは言ってみればドローンのスマホ化のようなものです。

今回ゼネラル・エレクトリックがエアウェア社への投資に乗り出したことで、「オートパイロット」の普及は加速すると見られています。既に、アメリカの他フランス、オーストラリアなどのドローン開発会社が「オートパイロット」搭載のドローンを開発しており、オーストラリアのサイバーテクノロジー社が開発した「オートパイロット」搭載ドローンは交通事故現場や災害現場で活用されています。

とはいえ、このような新しい技術や機械の運用には、新たな法整備も必要となってきます。アメリカの連邦航空局は現在商業ドローンを用いるためのルール作りを策定中。遅くとも2年後には新たなルールが施行される見通しです。

ただし、現在公開されている策定案では、夜間飛行禁止や操縦者にパイロットライセンスが必須であるなど、普及を阻害するような要因が盛り込まれていると報じられており、現実的ではないとの批判の声も上がっているようです。

ただし、これにはドローンの普及により職を奪われる可能性があるパイロットを保護する目的もあるとの指摘もあります。4D業の代替にしても、それに携わっている人の職を奪う可能性もあるわけです。こうした人間に変わる新しい技術が開発されたときは得てして起こりがちな問題が、ここでも持ち上がってきています。

一方、日本政府もこうしたアメリカでの急速なドローン技術普及には注目しています。総務省は昨年から数回に分けて「ロボット革命実現会議」を行い、2015年1月に「ロボット新戦略」をまとめました。そこでは、グーグルのドローンビジネス参入が名指しで指摘され、日本がその流れに遅れてはいけないという焦りがにじみ出ています。

また、現在の航空法ではドローンのたぐいはラジコンと同様の扱いになっているので、災害現場や火山などの監視などに運用し、また悪用されないための新しいルール作りが求められています。

様々な問題があるとはいえ技術の進歩は止めることができません。いずれにせよ、一定の基準を設けた対応は必要となるでしょう。

関連記事

おすすめ記事

ページ上部へ戻る