無人飛行機の持つメリット・デメリットとは

ウエアラブル端末にプロジェクションマッピング、新型スマホに新型タブレット・・・

新しい技術が次々と報道されていますが、その中でも無人飛行機ドローンは不動の人気を得ています。

特に大きく報道されたのが、アメリカのAmazonによる「無人飛行機による30分配達」でした。配送地域はある程度限られるものの、その範囲内であれば発注から30分で個人宅に商品を届けると発表したのです。

無人飛行機は最初、軍事用から開発が始まった分野でした。戦闘機を操縦する兵士の心の負担を減らすため、機体に人が乗り込まなくても、遠隔操縦できるようになっています。

ラジコンのような小型機を連想しがちですが、蝶のようなミニサイズから、45メートル級の大型機まで。現在は農業・商業・スポーツなど多方面で応用されるようになり、すっかりおなじみの飛行機となりました。

これまでドローンについては「アメリカに8兆円以上の経済効果をもたらす」など、メリットだけが報道されています。なにより無人飛行機には「人間が危険な思いをしなくてよい」という大きなメリットがあるからです。

とくに災害救助の現場では、この特性が大いに活用できます。

海や山などで遭難者が出た場合、どこにどういった人が何人いて、どういう状況にあるのかを把握し、救助に行くためのプランを立て、実行しなければなりません。

緊急時のことですから、道路も何もない場所で遭難することもありますし、道路はあるのだが、なにかの理由で使えないということもあります。

救助に向かおうにも、ルートの状況が良くないため、救助者が危険になってしまう場合もありますが、無人飛行機であるドローンなら、遭難者が環境の厳しい場所にいる時も、人の手を借りず、安全に迅速に探し出すことができますし、必要な品物を届けたりできるのです。

また、これまでは、誰にも撮影できない珍しい風景や動物を撮影しようと、カメラマンが危険な環境に入っていって、無理な撮影を試みようとする傾向がありました。

ドローンを使えば、どんな環境でも直接行かずに撮影できます。カメラマンが危険に遭わずに撮影できますし、これまで観たことのない映像が撮影できることでしょう。

すでにアメリカのデザイン学校では、J-botsと呼ばれるドローンの操作を授業に取り上げているところがあります。飛行機が飛べる環境である限り、どんな出来事も撮影可能ですし、報道ヘリなどに使われるコストも下げることが出来るかもしれません。

サッカーなどスピーディなプロスポーツの撮影にも、無人飛行機の活躍が期待されています。

スポーツは選手だけでなく、審判をつとめる人にもスポーツマンと同等、あるいはそれ以上の体力が必要となります。動きを見逃さず正確な判定を行うためには、スポーツマンの動きに目や身体が追いつかなければならないからです。

スポーツを撮影するカメラマンにも、同じことが言えます。

カメラマンが選手の迅速な動きに追いつかなければ、どんなに良いプレーをしても、撮影が間に合わないということになってしまうからです。

そこで「GoPro」と「ドローン」を組み合わせた「Nixie」が有効ではないかと言われています。カメラマンが重い機材を背負って走り回ることがなくなり、ドローンを操作するだけで、エキサイティングなシーンを撮影できるようになるかもしれません。

ところが最近、撮影用の無人飛行機とスポーツ選手の衝突事故が起きるなど、ドローンのデメリットについても関心が高まってきました。

たとえば、計画中は「兵士の心の負担を減らす道具」のはずだった軍事用無人飛行機。実際の作戦で兵士が運用してみたところ、むしろ普通の戦闘機より、心の負担が大きいことがわかってきています。

Amazonのドローン配達についても、発表こそ大きく報道されましたが、それに対する反応は、明るい内容とは言えません。「もしドローンが突然、あなたの自宅の敷地内に飛んできたら」というアンケートを取ったところ、多くの人が「危険を感じるので撃ち落とす」と回答したことが発表されたのです。

誰かが自分に向かって急いで走ってきたら、相手が好意的な目的であったとしても、何事かと警戒してしまいます。それと同じで、極端なスピードの物体は、どんな目的であっても、自分や自宅に向かって接近してくると怖ろしく感じるのです。

これとは別に、フランスの原発にドローンが何度も接近し、問題となっています。もちろん飛行が禁止されている場所です。

車なら道路しか行き来できませんし、他の車や通行人などがいるので、行動範囲が限られます。無人飛行機の場合、何もない空間を自由自在に飛び、人間に近づけない場所も含めて、どこへでも進入できるのです。

これと似た問題で、ドローンはプライバシーの尊重に関しても難しい問題を提起しています。

ストリートビューを撮影するための車が、どんな小さな道にも入り込み、撮影される人が気づかないうちに無断撮影していくので問題となったことがあります。カメラは小型化が進む一方なので、ドローンなら飛行や配達を装って建物内に入り込み、無断撮影することが可能です。

ドローンの普及と同時にデメリットの指摘が始まったのには、理由があります。

新技術の開発中は、賛同者を増やして開発を進展させるため、新技術のメリットだけを強調していることが多いのです。

開発中で、使ってみた回数がまだ少ないうちは、その技術を使う人・使う環境も限られていますし、使う人も開発の賛同者が大半となります。

ですが広く一般に普及するにつれて、新技術を使う人・使う環境の種類が増えていきます。

使用者が賛同者だけではなくなっていきますし、そこからの指摘を受けますから、開発者や賛同者も、技術を見る目を冷静に慎重にするしかありません。それにともなってメリット・デメリットが明確になり、デメリットの改善が行われることによって、技術の完成度が上がっていくのです。

指摘を無視してメリットだけの強調を続ける技術は、いつまでもデメリットが改善しません。

ドローンの性質を上手に活用して、喜ばれた成功例もあります。

モスクワのランチタイム直前、ドローンが昼食用のメニューを書いたチラシを載せてオフィス街を飛び回ったところ、大好評。アジア系レストランが行ったもので、この広告の手法には「drone-vertising」の名前がつきました。

無人飛行機の利点を活かし、ドローンの配達が喜ばれるためには、単なるスピード追求の他にも、なにか必要なものがありそうです。

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