スイスで開発された空陸両用ロボット飛行機DALERとは

首相官邸への墜落事件でにわかに注目をあびるようになったドローンですが、これまで触れもしなかったものが何か事件に関わると、ひたすらネガティブイメージを流し続けるのが日本のマスコミの特徴。

ただ、実際にはテレビ番組でもあきらかにドローンを使っているであろう空撮動画をよく見るようになってきたので、そういつまでも否定的な論調で報じることもしないでしょう。

ドローンの実用的な面で最も期待されているのが、災害現場での活用。その他、ドローン先進国のアメリカでは危険な作業現場での調査作業にも使われ始めています。

ただ、現状のドローンは継続飛行時間が短いという欠点があり、また空中での運用しかできません。空と陸で運用するために、陸上走行ユニットを取り付けるという方法はあるのかもしれませんが、機体重量が重くなれば当然航続時間も短くなるのが道理なので、今の時点では難しいことかもしれません。

そんな中、スイス連邦工科大学の知能工学研究室は、ドローンとは違う発想の空陸両用機の研究開発を行っています。「Deployable Air-Land Exploration Robot(展開可能な空陸探索ロボット)=DALER」と名付けられたこの機体は、見た目は初代ステルス戦闘機F-117のようなイメージ。ただし大きさは翼長50cm程度のようです。

機体中央には小さなプロペラが付いていますが、そのプロペラがかつて駄菓子屋で売っていたゴム巻きのおもちゃの飛行機かと思うような感じで、ただ、さすがにゴム巻きではなくモーターが接続されています。そのような小さなプロペラで飛べることでどれだけ機体が軽いかがうかがわれます。

そして、展開可能という名称の肝が翼にあります。翼は内部に仕込まれた骨組みが伸び縮みできるようになっていて、着陸すると肩をすぼめるようにして本体に引き寄せ、そしてその先端部分が回転することで陸上を進めるようになります。

一見チャチに見えるこの翼は、災害現場で用いることを前提とした耐衝撃性を備えており、着陸時の衝撃も問題ありません。

また、飛行させるために滑走路は必要なく、人間が紙飛行機でも飛ばすように空中に投げるとプロペラが駆動して空を飛び回ります。そのスピードはなんと時速70km/h。実験機とはいえショボい見た目に反して高性能のようです。

着陸は紙飛行機が地面に「落ちる」様子を思い浮かべてもらえばいいと思います。耐衝撃性を頼りにしたかなり雑な着陸をします。着陸すると上述のように翼を縮めてその先端を回転させ、陸上を移動しますが、走るというよりはばたんばたんと這いずるといった感じです。

その這いずる様子は、平地では問題なく移動できているとはいえ、ほんとうに瓦礫が散乱したような災害現場でも移動できるのかは疑問。

とはいえこれはまだ実験段階の機体です。ホンダの二足歩行ロボットASIMOも、その研究開発の初期段階では、二足歩行自体がままならないような有り様でした。技術というのはトライアンドエラーを重ねて進歩していくものなので、将来的にDALERがどのような完成形になるのかは今から楽しみです。

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