ジャンボ機のパイロットは2人と半人前、合わせて2.5人!?
山の上は天気が変わりやすいと言いますが、上空はそれ以上に過酷な空間。気温はマイナス数十度、急に天気が変わったり、突然風が吹いてきたり・・・。
でも航空機は自動車と違って、天気が悪くなったからその辺に駐車しようにもできません。なにもない空中を飛行しているので、風に吹き飛ばされないよう、どこかに固定する手段もありません。
無事に目的地に着陸したければ、失速しないよう、傾かないよう、バランスをとり続けて姿勢を維持するしかないのが航空機です。
そのためには「飛行機がいつバランスをくずしても、すぐ立て直せる」しくみが必要。
操縦桿など、機長の座席にも副操縦士の座席にも備わっているものは、両方が同じ動きをするようになっています。いつどんな瞬間に何が起きても、どちらも操縦できるし、操縦を引き継いだり、預けたりできるようになっているのです。
でも、操縦がどちらかにロックされているわけではないので、機長と副操縦士とが別々の操縦を同時に行うことが可能です。
機長が操縦桿を左に回して、副操縦士が桿縦桿を右に回す。ということができるのです。この場合、回した力の大きいほうが優先されます。ラダーペダルなども同様です。
とりあえず今は何事もないと思ってのんびり操縦している人は、それほど力んで操作していません。なにか異常に気づいて、この瞬間すぐに対応しなければまずいことになると考えた人は、急いで全力で必要な操作をします。
その違いがありますから「強い力で操縦した人優先」の構成になっていたほうがいいのです。
でも、緊急時でもないのに、常にそれでやっていたのでは、二人組での操縦が成立しません。二人とも同時にやろうとしたり、相手がやるだろうと思って、どっちもやらなかったり。
そういうことが起きないよう、いつどちらが操縦するかは決まっていますし、なにかの理由で操縦を交代するときは「アイ・ハブ・コントロール」「ユー・ハブ・コントロール」と声を出して、どちらが操縦桿を握るか、確認しあいます。
また、ジャンボ機には人間2人のパイロットのほかに、オートパイロットで自動操縦ができるようになっています。空港から出発して目的の空港に向かうまで、巡航・空港への進入・着陸、出発から到着までのほとんどの段階で使えます。
航空機でオートパイロットまかせにできる部分が多いのは、上空特有の性質です。一定以上の高度の上空は、比較的安定した環境だからです。
離着陸時はともかく、航空機が一定以上の高度に達してしまうと、行く手に障害物がなにもない状態になります。山の上独特の乱気流はともかく、山そのものはその高度に達しませんし、生き物もなにもいない空間ですから、固体にぶつかる心配がまずないのです。
現在はICAO、ARINCなどによって、世界の航空関連の通信は緻密で充実したものになっています。航空機が離陸する前から巡航、着陸した後に至るまで、自分の航行に必要なデータを膨大に取得できるのです。
ですが、オートパイロットの誤作動で深刻なトラブルになったケースがあり、領空侵犯に至ったものもあります。
オートパイロットの発達は、機長と副操縦士2人きりでの運航に大きく貢献しているのですが、能力には限界があり、あくまでも半人前のパイロットに過ぎず、全面的にまかせて、誰も面倒を見ないという状態にはできないそうです。