旅客機には、旅客機のドクターが乗っている!?

コックピット内のパネルには、人間で言えば目や耳、頭脳ともいえるような複雑なしくみが組み込まれています。そのしくみに異常がないか、問題が発生してないか。人間の健康診断に相当するような、ドクターのような働きをするシステムが、旅客機そのものに搭載されています。

そのひとつは、FMS(フライト・マネージメント・システム)。飛行に必要な膨大なデータを記憶しています。各種の飛行ルートを構成するウェイ・ポイント(通過点)。地上無線局、空港の名前、位置、標高、周波数など。

出発地と到着地を入力しただけで、すぐに最短の飛行ルートを算出する、便利なものです。なにかで緊急にルート変更しなければならないときも、別ルートの算出ができます。燃料消費が少なくて済むルートを算出することもできるし、エンジンコントロールやほかのこと、全てFMSが計算してくれます。

もうひとつは、IRS(イナーシャル・レファレンス・システム)。

3台のレーダージャイロにより、機体位置や進路、機体速度、風向き、風速などを計算してくれます。船でいえば「羅針盤」、これさえあれば、空で迷うことはありません。このシステムで得られたデータは自動的にFMSに送られ、飛行計画の作成に必要なデータの一つとなります。

さらに、CMS(セントラル・メンテナンス・システム)。

これはジャンボ機内の各種システムの監視をしながら、自らの稼働状況を自己診断する優れものです。CMSの採用で、整備士はシステム状況をチェックする必要がなくなり、監視データとパイロットの意見を総合すれば、すばやく的確に整備計画を立てることができるようになりました。

フライト中に機体の故障や異常が見つかったときに、地上に降りてから整備士に連絡するより、問題点がなにか、あらかじめ地上に送信しておけば、整備士がより早く効率よく、整備に取り掛かることができます。

そういう時に役立つのが、ACRS(エアクラフト・コミュニケーションズ・アドレシング&レポーテイング・システム)です。機体の異常を地上に電波で送信できるシステムで、着陸する前に整備士に問題点を伝えておくことができて、迅速に点検・整備ができます。

このシステムは整備士の負担を大きく減らしてくれたのですが、こうなると、システムの核となるマイクロコンピュータが、他の多くのシステムと連動していることになります。ひとたびどこかのシステムに異常が発生したら、関連するシステム全てをチェックしないといけないのです。

そのかわり、以前より広い範囲でシステムの状況を見渡すことができるようになりましたから「ここを改善するといいと思う」という提案を、システムを作るメーカーに伝えることができるようになりました。「部品をこうしたらいいかも」は、こればかりは、システムが計算するわけにはいきません。これこそ、人間の整備士でなくてはできない仕事です。

関連記事

ページ上部へ戻る