知っているようで知らない「管制」のお仕事って?

飛行機を題材としたドラマや映画では、よく管制官が出てきてパイロットと連絡を取り合うというような場面が出てきますね。さてこの「管制」、正式には「航空交通管制」と言います。

管制業務は法的には、、「航空機相互間及び走行地域における航空機と障害物との間の衝突予防並びに航空交通の秩序ある流れを維持促進するための業務」と定義されています。

しかし役人さんが書いた文章は無駄に分かりにくいので平たく言うと、飛行機が飛んでいる空で飛行機同士やなにかの障害物との衝突が起こらないように、いわば「空の交通整理」をするということ。

そして、このような管制業務を行う人を「航空管制官」といいますが、航空管制官には国土交通省の航空局に所属している人と、自衛隊に所属している人がいて、どちらも国家公務員。自衛隊の航空管制官は当然自衛官でもあります。

航空管制官になるには、まず航空管制官採用試験に合格してから養成所に入って研修や実地訓練を受け、その後に技能証明を取得しなくてはなりません。

自衛隊所属以外の航空管制官は、国内の各空港で管制業務を行います。管制業務は上記のように空の交通整理ですから、そのためにはまず空の状況を把握していなければなりません。

日本の航空法では、有視界飛行を行う航空機、つまりヘリコプターやグライダー以外は「飛行計画=フライトプラン」を提出し、管制により承認を受けなければなりません。管制官はそのフライトプランを元に空の交通状況を把握します。

といっても、現代ではフライトプランを飛行情報管理システムに入力することで飛行機それぞれに識別信号が割り振られ、レーダーとの連携によってそれぞれの飛行機の位置を把握できるようになっています。

レーダーというとフィクションの世界でもよく目にすると思います。
ディスプレイには平面に表示されるのでイメージしにくいかもしれませんが、実際のところ空の交通には高度というものがあるので、飛行機の位置は二次元ではなく高度も含めた三次元で把握していなければなりません。

しかし、レーダーといっても実際には地球上全てをカバーできているわけではなく、レーダーでの探知ができない場所、主に洋上に飛行機がいる場合はパイロットから直接現在位置の申告を受けます。

ところで、レーダーというものは具体的にはどういうものなのでしょうか?

ごくごく大雑把に言うと、電波を発射して、何かに当たって跳ね返ってくる電波をキャッチし、その何かの位置を探知するというものです。

いわゆる「ステルス」とは、レーダーの電波が跳ね返っていかないように逸らしてしまう技術です。

基地から電波を発射し、返ってくる電波を拾うというシステムは「一次レーダー」といいます。

それに対して、電波の発信側に「インタロゲーター」という発信機、飛行機の側に「トランスポンダー」という返信機を置き、その間で電波のやりとりをするシステムを「二次レーダー」といいます。

「一次レーダー」は、基地から発射した電波が物理的跳ね返ってくるのを受け取るだけのものなので、電波を跳ね返した位置に何かが存在することはわかりますが、それ以上のことはわかりません。

現在では旅客機には必ずこのトランスポンダーが搭載され、管制業務では「二次レーダー」が利用されています。

しかし、インタロゲーターとトランスポンダーのやりとりをしても、トランスポンダーを搭載している飛行機がいったいどこのどなたなのかがわからなければ意味がありません。

そこで活躍するのが、前述のフライトプランをもとに割り振られた識別信号。

パイロットはトランスポンダーに識別信号を入力してから飛行機を空に飛ばします。トランスポンダーからの応答にはその識別信号が含まれるので、管制側はそれでその応答をしてきた飛行機がどの便であり、どこを飛んでいるかを知ることができるのです。

それがさらに進化したのが「ADS-B」というシステム。

これは、飛行機の側がGPSにより経度・緯度・高度の位置情報を取得し、それをトランスポンダーから識別信号とともに常に発信するというもの。

管制側がより正確にその飛行機の位置を把握できるようになるとともに、管制に頼らずに衝突防止をすることができます。

このようなレーダー技術の発展は航空管制官への負担を減らすことができます。

負担が減るというのは楽になるということではなく、より精密に飛行機の位置を知り、より正確に「交通整理」ができるようになるということを意味します。

しかしそこまで技術が発展しても、2014年のマレーシア航空機行方不明事件のようはことが起きてしまうものです。空の交通の発展と安全性の確保というのはいわばイタチごっこのようなもので、100%なくすというのは難しいことなのかもしれません。

それでもなお、空の需要が右肩上がりに増えて空が混雑していっている今だからこそ、更なる管制の技術が求められているとも言えるでしょう。

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