映画MITのようなことが現実になる?

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロで戦争の形態が変わったといわれています。

最近の戦争は、いつ戦争が始まって、いつ終わったのか分かりません。また、9.11のように、一般市民も巻き込まれます。そして、ミサイルを持っていても、戦闘機があっても全く意味がないような状態です。

では、国を守るにはどうすればいいのでしょうか。

アメリカは、従来の国防総省のやり方では守りきれないとして、国土安全保障省を創設しました。そこでは国境の出入りを管理します。そして、それを管理するには、生体の情報を取ってデータ化するのが一番いいという結論になり、その最初のトリガーがこの国境管理なのです。

さらにユビキタスも問題となっています。

コンピュータや電話を常に持ち歩く世の中になり、落としてしまったら大変なことになります。携帯電話は今まで通話だけだったのが、インターネットでデータベースにアクセスすることができ、また、携帯電話に直接お金をチャージすることも出来れば、機械にかざすだけで支払いもできます。

そこで、みんなが簡単に使える方法を考えなければなりません。

モノにはICタグを付ければいいのですが、人間はそうはいきません。

相手と対面する場合には通常、免許証やパスポートなどを見せ、写真と同じ顔であることで本人であることを証明します。

そこで、バイオメトリクス(生体情報)認証という、本人確認の技術が実用化されてきています。人の身体的特徴やくせなどのバイオメトリクスをチェックして本人かどうかを確認する、という認証方法です。

特にインターネットでは、本人の確認、つまりユーザー認証が難しく、現在、ネットワーク世界のユーザー認証は、ユーザーIDとパスワードやデジタル証明書などが利用されています。

しかし、今ではネット上からパスワードを盗まれる時代です。また、ICカードといったモノやデータを持ち歩かなければなりません。そのため、これを忘れると、たとえ本人でも本人として認めてもらえません。

そして、これらが第三者の手に渡ると、他人が本人の振りをする”なりすまし”が簡単にできてしまいます。

その点、バイオメトリクス認証は、基本的にユーザーはパスワードを設定してそれを覚えるというような手間は不要で、本人でありさえすればいいのです。

例えば指紋をスキャナーで読み取らせたり、声を出したり、あるいはタブレット上に手書きのサインをしたりするだけで本人であることを証明できます。

現在、ユーザー認証として実用化されているバイオメトリクスには、指紋や音声(声紋)や掌紋、顔、虹彩(瞳のまわりにある筋肉の模様)といった身体的特徴、サインといったくせなどがあります。ほかにも、キーボード入力のリズムをチェックするなど、さまざまなバイオメトリクス認証技術の開発が進められています。

ただし、このバイオメトリクス認証にも課題はあります。

バイオメトリクスは身体的特徴などを利用するため、個人の特徴があまり明確でない場合、認証率が高くありません。たとえば、指紋は、体質や業務などによってスキャナで指紋がうまく読み取れない人がいます。

ところが最近では、複数の種類のバイオメトリクスを利用できるマルチバイオメトリクス認証システムが登場しました。

例えば、指紋が使いづらければ、顔などを認証に使うことができます。

他にも色々課題はあるものの、バイオメトリクス認証なら、パスワードの文字列の選択や変更の頻度といったような、ユーザーのスキルにあまり依存せず、操作が簡単なため、だれでも一定のセキュリティ・レベルを保てます。

スキャナやカメラなど、バイオメトリクスを入力するための装置が必要になるという難点はありますが、ユーザー自身が持ち歩く必要はありません。

そして、操作が簡単であるため、例えば携帯電話に指紋センサー・チップを装置すれば、実用的なセキュリティ機能となりえたり、応用範囲は広がります。

日本でも新しいパスポートは、硬いページの部分にICチップが埋め込まれており、本人の個人情報が入力されています。このようなパスポートはICパスポート、電子パスポート、バイオメトリック・パスポートと称されます。

しかし、実は現在のところは生体認証技術はほとんど用いられておらず、電子的に記録された顔画像をディスプレイに表示して係官が目視でチェックしている状況です。

パスポートの偽造防止には一定の効果を発揮していますが、本来目指していた生体認証技術を用いた自動的な高精度の本人確認が、今後の課題となっています。

関連記事

ページ上部へ戻る