超大型旅客機の需要は減少中・・・このまま消えてしまう?

ボーイング747といえば「ジャンボジェット」の愛称で日本でも親しまれてきた機体でしたが、2015年の3月、ANAのグアム発チャーター便に使用されていた機体が退役したことによって、日本の航空会社使用機材からはジャンボジェットの姿が消えました(旅客機のみ)。

ボーイング747シリーズは、1969年に登場した超大型ジェット旅客機です。現在見られるようないわゆるジェット旅客機の外見をした飛行機は、はやくも戦後間もない1950年代に登場しています。ただ、ボーイング707など初期のジェット旅客機の旅客搭載可能人数は、多くてもせいぜい200人程度でした。

しかし、航空路線の増加や戦後の経済発展などによって、航空需要は増えていきます。そうした流れの中、さらなる需要増加をいち早く読んだのが、当時日本で「パンナム」として親しまれていたパンアメリカン航空でした。パンアメリカン航空は、ボーイング社が開発した最初のジェット旅客機ボーイング707を初めて発注するなど、大きな影響力があったため、ボーイング社に対してボーイング707の倍以上となる旅客搭載量400人超の新鋭機の開発を要請。

ボーイング社はその要請に対して、本来米軍の大量輸送機として開発を進めていた機体を旅客機に転用し、最大搭載人数550人というボーイング747を開発しました。開発当初は、その巨大さに供給過多ではないかという意見もあったようです。しかし、パンアメリカン航空の読みは当たり、当時増え続けていた航空旅客の受け皿として世界各国の主要航空会社で採用され、日本でもJALがいち早く導入しています。

特に、当時の日本では折よく海外への団体旅行ブームが起こってきており、大量輸送が可能なジャンボジェットは、団体ツアーのまとめ売りで一人あたりの旅費を引き下げるということにも貢献しています。当時は団体旅行といっても割引になるには最少催行人数が40人などというわりとハードルが高い条件があったため、その人数をクリアできたのは「農協ツアー」ぐらいのものでした。

ただ、ボーイング747の歴史が長いといっても、先般引退したのは40年以上前の機体ではありません。ボーイング747シリーズは、40年以上改良をかさねてマイナーチェンジを続けていました。JALやANAで最後まで使われていたのは、ボーイング747シリーズの中では初めて自動操縦装置などを搭載し、航空機関士と航空士を廃した2人体制のコクピットを導入した機体ボーイング747-400です。

ちなみに、ボーイング747-400の後には、後継機のボーイング747-8が開発されて、現在でも製造されています。

敬遠される超大型機と、人気の双発機

日本の航空会社からは姿を消したとはいえ、ジャンボジェットは世界中の空からいなくなったというわけではなく、ボーイング747-400やボーイング747-8を使用している航空会社もあることはあります。ただ、ジャンボジェットやエアバス社のA380のような巨大旅客機の需要は世界的に減りつつある状況であるのは確か。

ボーイング747、そしてA380はエンジンを4基積んだいわゆる「4発機」ですが、現在の主流はエンジン2基の「双発機」になっています。そして、特に双発機の中でも大型機は、ボーイング777やA330が人気です。これはエンジン性能や機体軽量化技術などが進化したことで双発機でも十分長距離を飛べるようになってきたためです。

同じ距離を飛ぶのであれば、当然エンジンが4基より2基のほうが運航コストが少なくてすみます。さらには、カーボン機材を多用した中型機ボーイング787の登場によって、中型機でも長距離路線を運行できるようにもなっており、4発機の需要はますます減ってきています。

飛行の安定性では双発機は4発機にはかなわないというのが、実際操縦しているパイロットの本音ではあるようです。しかし、LCCなども参入した激しい競争の中では、コスト削減のほうが優先されるのは致し方ないことかもしれません。

ボーイング社の現状

ボーイング社は、上述の通りボーイング747シリーズの最新鋭機ボーイング747-8の生産を続けています。ボーイング747-8は、ボーイング747-400よりさらに胴体を長くした機体です。しかし、旅客タイプの「インターコンチネンタル」を使用しているのは、2015年現在、大韓航空、ルフトハンザドイツ航空、中国国際航空のわずか3社にとどまっています。

ただ、旅客型の人気の無さに反して貨物タイプの「フレイター」は、航空貨物輸送を行っている各社が発注しており、特に航空貨物輸送の専門会社であるカーゴルックス航空や日本貨物航空などは、現行のボーイング747-400F(ボーイング747-400の貨物タイプ)から順次入れ替えるとして、ローンチカスタマー(製造前の機体を採算が取れる数量発注する顧客)となっています。

フレイターは一時期は性能などの問題でカーゴルックス航空に受領を拒否されるといったゴタゴタがあったものの、現在では徐々に貨物輸送に導入されていっています。

747-8はさらに、2021年にアメリカ大統領専用機の次世代機として3機の導入が決まっています。

ボーイング747-8を日本で見たい場合は、ルフトハンザドイツ航空が毎日運行しているフランクフルト-羽田のLH716便で使用しているので、それが到着する時間(12:15もしくは13:05)に羽田空港に行けばいいでしょう。

エアバス社の現状

エアバス社の超大型旅客機A380は、主にシンガポール航空やエディハド航空、エミレーツ航空などのどちらかというとハイエンドな航空会社が使用し、ホテルのような高級シートを用意しているというイメージがあります。

特にシンガポール航空のスイートや、エティハド航空の「ザ・レジデンス」などはシートというよりはコンパートメント。エミレーツ航空の場合はシャワールームまで用意しています。その他A380を導入している各航空会社も、かなり贅沢なプランを用意しているようです。

経営破綻したスカイマークが、支払い能力に懸念を示され、契約をキャンセルされたという話題以外には、そのような豪華シート(ルーム?)が話題になるA380ですが、実のところ2014年の受注はゼロでした。

A380は、エンジンが非常に燃費が悪いことで知られており、140機という世界最大数の発注元(これに次いで多いのはシンガポール航空の24機)であるエミレーツ航空は、最大顧客という立場を利用してこの問題を改善するようにエアバスに圧力をかける他、独自にロールスロイス製のエンジンに載せ替えたりもしています。

エアバス社内では、採算がとれないA380の製造を中止しようという動きもあったようですが、とりあえず製造中止については否定しています。また、やっと重い腰を上げ、燃費改良型のA380neoや、胴体の延伸型であるA380-900の製造を検討しだしています。

本音のところではもう造りたくないけれど、大口顧客のために中止しようにも出来ないというのが本当のところかもしれません。

世界的な流れとしては超大型機の需要が減るというターンにあるものの、ムスリムの巡礼のための大量輸送にA380を使おうという構想を持っている中東の航空会社もあるとも聞き及んでいますし、こういった需要は時代によって変化するものなので、また超大型機が必要とされる時代がやってこないとも言い切れません。

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