旅客機からパラシュートでダイビング!?

2000年5月に、フィリピンの南部ミンダナオ島ダバオ発マニラ行のフィリピン航空機がハイジャックされるという事件がありました。

乗員乗客は約290名、銃と手榴弾を持ったハイジャック犯は、乗客の金銭を奪い、乗員に指示して旅客機の後部ドアを開けさせ、手づくりと思われるパラシュートを開いて、旅客機から飛びおりたのです。

マニラ到着の直前、高度約1800mからの降下。

実は同日夜、犯人はマニラから東に40マイル離れた丘陵地帯で、遺体で発見されました。降下途中にパラシュートが故障したらしいのです。パラシュートが故障せずに、犯人にスカイダイブやパラシュート降下の技術があれば、助かったかもしれないのですが・・・。

こうしたことから分かるように、旅客機からパラシュートで飛び出して降下するのは、理論上は可能ですから、旅客機事故のニュースが流れるたびに「全客席にパラシュートをつけておいて、それで脱出すればいいのに」という意見が出ます。

しかし、パラシュートは見かけより重量のあるもの。もし旅客機の乗客の人数分パラシュートを積んだら、相当な重量になり、その重量分の燃料費など、コストが膨大になります。乗客の数を半分くらいに減らすか、航空運賃を高額にするかしないといけません。

また、パラシュートの扱いはかなり難しく、訓練が必要です。初心者の場合、訓練には200時間以上かかります。ところが記録から計算すると、旅客機事故に遭う確率は、旅客機に毎日乗ったとして「438年に1回の割合」。

そういう説がありますから、それを考えると「そのためにパラシュートの訓練を受けられる場所に出かけ、最低でも200時間を超える特訓を受けて、万が一にそなえる」というのは、良い考えかもしれませんが、現実的ではありません。

それに、もしパラシュートを積載し、乗客にもパラシュート技術があり、いざ緊急事態となって「乗客の皆さんパラシュートを開いて旅客機を出て降下しましょう」となったとしても、それに必要な条件が揃っているとは考えにくいのです。

たとえば、旅客機は着陸のため減速している時でも時速200km。この速さでは、パラシュートがうまく開きません。

うまく開いたとしても、緊急時に急に旅客機から飛び出すのですから、どんな場所に向かって降下するのかわかりません。海の上や、山の中かも知れないし、着陸地点が安全とは限らないのです。誰かに「先に行って、降下地点の安全性を確認してください」とお願いするわけにもいきません。

なにより、航空機の墜落事故では、多くの場合、機体がきりもみ状態で落ちていくのです。そういうときにパラシュートの準備をしたり、降下地点をどこにするか相談するのは無理があります。

パラシュートで飛行機から飛び出す人の映像を見ていると、シンプルで扱いの簡単な道具にみえますが、実はそうでもないのです。

シンプルな道具ほど、奥が深い。

旅客機に乗客用のパラシュートがないのは、そういう理由からです。

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