パイロットはもとよりビジネスマンは心身健康が第一

2015年3月24日、ドイツのLCCジャーマンウィングスの航空機が墜落、アルプス山脈の急斜面に激しく衝突して機体は木っ端微塵となり、乗員乗客150人全員の命が犠牲となりました。

2014年にはエアアジア機墜落やマレーシア機の消息不明などもありましたが、航空機事故はあってはならないものの毎年発生していることも事実です。

そんな中で、ジャーマンウィングスの事故が注目を浴びたのは墜落の原因にありました。

それは、精神状態に異常をきたした副操縦士が意図的に墜落させたという震撼の事実でした。

発見されたCVR(コックピットボイスレコーダー)には、墜落前の副操縦士の息遣いと、操縦室の外から必死に開錠を求める機長の叫び声だけだったといいます。

その後、事故を起こした副操縦士が重いうつ病状態にあったということが報道されました。

仕事のプレッシャー、網膜はく離の視力低下による焦りや失恋などの不安状態から、医師の診察を受け、乗務禁止の警告を受けながらも、会社には隠して乗務していたといいます。

機体不具合などによって墜落事故が発生した場合の損害賠償も相当な額といわれていますが、今回は心身に問題のある社員を就業・乗務させたことによる事故のため会社側にも過失が問われることとなるでしょう。

そうなると、ひとりあたりの賠償額も莫大となる上、さらに被害者遺族によって訴訟を起こされるという可能性も非常に高くなりますので、ジャーマンウィングス社は窮地に陥ることも考えられます。

日本においては、心身状態に問題のある社員を就業させたことに関する判例として、2000年に最高裁により判決がでている「電通事件」があります。

これは電通に入社した男性新入社員が、慢性的な長時間労働の末、不眠症や異常行動を起こし、うつ病に罹患、入社からわずか1年5カ月で自殺に至ったというものでした。

男性の遺族は会社に対して責任追及を行う損害賠償訴訟を起こしました。

電通側は会社側に責任はないと一貫して主張しましたが、最高裁において電通側が約1億6,800万円にのぼる高額の損害賠償金を支払うことで和解となりました。

この判決により「企業側に社員の健康状態を把握し、適正に対象する義務がある」ということが示されたのです。

うつ病になったのは個人の性格が原因だとか、従業員の自己管理能力がなかったなどという言い訳は通用せず、企業は従業員からの自己申告の有無にかかわらず、心身の状態を適切に把握、対応することが求められるようになった判例になります。

日本では2015年の12月から、従業員数50名以上の企業へのストレスチェックが義務化されました。

ジャーマンウィングス社の航空機事故は被害も賠償の規模もけた違いですが、一般的な企業であっても精神不安定な従業員により会社に過失が生じた場合、その責任は企業側に振りかかることになり、損害賠償はもちろん風評被害等も発生しかねません。

企業の規模によって今回のストレスチェックの義務化の対象外とされている企業も、自発的に取り入れることがリスクマネジメントにつながることになると考えられます。

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