国内線運航便の採算ラインはどれくらい?

2015年1月にスカイマークが経営破たんに至りましたが、このことが地方空港にも少なからず影響しているようです。

スカイマークは鳥取県にある米子鬼太郎空港に2013年12月に就航しましたが、今年8月末を目途に同空港に発着するすべての路線から撤退する計画を明らかにしました。

新興エアラインやLCCとは無縁だった山陰地方に初めて就航したスカイマークが、2年絶たずに手を引かざるを得ないことになってしまったのです。

米子空港を発着する2014年8月時点でのスカイマークの運航便数を見てみると、羽田線2往復、成田線2往復、神戸線2往復、札幌線1往復、沖縄線1往復の合計8往復16便を運航していました。

このうち、経営破たん前の2014年10月末には既に羽田線、成田線、札幌線の3路線からは撤退しています。運航を継続していた神戸線、沖縄線についても、ついに来夏で運休されることが決定したのです。

2015年春からは羽田線の再運航が予定されていましたが、これも撤回されることになり、完全撤退となるようです。

ところで、国内線運航便の採算ラインはどれくらいだと思いますか?

一般的には大手航空会社は搭乗率60%、低価格帯の新興エアラインやLCCでは搭乗率70%が採算ラインと言われています。いまや国内線の多くで使用されているB737やA320がだいた150席とすると、新興エアラインでは105席以上が埋まらないと厳しいということになります。

105席というと、左右3席ずつのB737の機材で窓側と通路側の席が全て埋まっている状態になりますが、平日でも朝夕の需要の高い時間帯では可能な数字ですが、昼間など実現が難しい便もあります。

スカイマークの米子路線はというと、8月こそ羽田便で78.5%を記録していますが、70%を超えているのは7、8月のみ、それ以外は6割前後で推移しています。成田線に至っては30%台という窮状で、米子~神戸線の2014年11月の搭乗率は55.5%、米子~那覇線は49.4%で、苦戦を強いられています。

実は、スカイマークはそもそも参入・撤退を繰り返すことにより良好な経営状態を保ってきた会社だったのです。

地方空港にもフットワークよく参入しますが、収益性がないと判断した場合には素早く手を引くという、合理的なビジネスモデルを実行していました。行政や利用する地域の住民もそのあたりは概ね理解していたようですが、今回全面撤退となる米子空港の地元の反応は少し違っているようです。

米子空港は、島根県との県境に位置する境港市にあり、鳥取西部や島根東部を訪れる人や周辺住民が主な利用者となっています。鳥取、島根両県は新幹線が通っておらず、特に鳥取西部は公共交通の便が良くないとされています。

首都圏をはじめとする遠方への移動については航空路線が有力な手段のひとつとなっているにもかかわらず、もともと米子空港に発着するのはANAのみだったため航空運賃の高止まりがあり、運賃の安いスカイマークの就航には地元から大きく期待されたことだったのです。

スカイマークの米子空港撤退については、鳥取県や隣接する島根県在住の人からは惜しむ声が多く、同社の経営状況が要因となっての撤退は仕方がないと理解しつつも、関東や関西方面へ安い運賃で移動できなくなることを残念がっているようです。

米子空港の場合、周辺には鳥取空港や出雲空港、萩・岩見空港などがありますが、スカイマークやソラシドエアなどの新興エアラインおよびジェットスター・ジャパンやピーチアビエーションなどのLCCが就航していないため、空路を利用する場合には大手以外の代替手段がないという現状も、利用客にとっては大きな痛手になっているのでしょう。

スカイマークは米子空港から撤退する一方で、石垣空港や宮古空港発着の路線は引き続き継続するとしています。以前の石垣や宮古空港の発着路線は、米子空港同様、大手航空会社のみで運航されていたため、需要はあるものの航空運賃が下がらないという状況が発生していました。

そこへスカイマークが参入したところ、那覇-石垣・宮古の運賃が大きく下がり、2014年秋の割引運賃では片道4,000~5,000円と、その存在意義は大きいものと評価されているのです。

ただ、一時は大手航空会社がスカイマークの運賃に追随して両路線の価格を下げてきたことから、スカイマークの搭乗率が低下し、運休に追い込まれてた過去があります。

スカイマークの運休後、運賃水準が再び上昇してしまったことから、同社の復活を切望する住民も多く、2014年8月には石垣島の民間企業を中心に416社が加盟する協同組合が合同で「スカイマーク応援宣言」を表明しました。

地元を中心に積極的にスカイマークを利用する体制を整え、実際に地元利用者が増えたことも引き留めに繋がったといえるでしょう。

現状において、日本の地方空港は「ドル箱」と呼ばれる羽田線・伊丹線以外で収益を上げるのは難しいとされています。

地方の行政や空港は運賃の安いLCCやスカイマークのような低価格運賃を打ち出す新興エアラインを誘致、就航させることで、運航便数増加=空港の活性化を望んでいます。

しかしながら、現状において日本の地方空港はドル箱と呼ばれる羽田線・伊丹線以外で収益を上げることは難しいとされており、採算ラインが厳しい路線に新興エアラインやLCCを地方空港に呼び込み、定着させることは容易なことではありません。

就航までは行政や地元の経済界などの努力がメインとなるのですが、就航後は地域住民の積極利用がなければ撤退せざるを得ない状況にもなってしまうのです。

周辺地域のニーズを見極めた誘致というのも重要なことなのかもしれません。

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