旅客機が出せる最大速度は時速何キロ?

旅客機が巡航しているときの速度は、時速約800~900kmです。しかし、この速度はその旅客機が出せる最大速度ではありません。たとえば、ジャンボ(ボーイング747)機の場合、最大速度は時速1030km(マッハ0.92、高度7400m以上のとき)といわれています。

ただし、もし常に、このような高速で飛びつづければ、機体の振動や揺れが激しくなり、乗客の安全・快適性が失われるだけでなく、エンジンや機体にも大きな負担がかかり、故障の原因をつくったり、機体の寿命を縮めることになります。速く飛べば、それだけ目的地に早く着けますが、それと引き換えに乗客に不快な空の旅を押しつけ、同時に燃費を悪くし、機体をすり減らせ、さらに大きな騒音をたてて、周りの環境を害することにもなるのです。

そのため、実際のフライトでは、「経済速度」(エコノミック・スピード)と呼ばれる速度が使われています。これは、その日の気候条件なども加味したうえで、最適な飛行高度や飛行速度をコンピュータで計算する「フライト・マネジメント・システム」(FMS)によって出されるものです。そのフライトに最適な経済速度が決まれば、ちょうどそのスピードが出せるよう、エンジン出力を調整するスラストレバーの位置も決められるしくみになっています。こうして、安全・快適で、なおかつコスト面でも最適なフライトが約束されるわけです。

では、世界最速の旅客機はどれくらいのスピードが出せるのでしょうか。いま(いままで)、世界一のスピードを誇る(誇っていた)のは、2003年10月に27年にわたる運航の歴史に幕を引いた超音速機「コンコルド」です。その最大速度はマッハ2.04(時速約2450km)、最大巡航速度(運航時に出せる最高速度)は時速約2180km(高度1万5635mのとき)とジャンボ機の2倍以上の速さでロンドン-ニューヨーク間を3時間45分(ジャンボ機なら約7~8時間かかる)で飛び、「怪鳥」の異名もとったほどでした。

しかし、2000年7月25日、パリのシャルル・ド・ゴール空港を離陸したばかりのコンコルドが、乗員乗客109名の死者を出す墜落事故を起こして以降、同機の乗客数も伸び悩み、コスト高も手伝って生産中止、さらには運航中止へと追いこまれたのです。

本来、旅客機の使命は「より遠くへ、より速く」でした。しかし、時代はいま、少し違った方向へ向かっているようです。超音速で飛行する場合のコストの問題、ペイロード(客室の座席数や貨物スぺース等)の問題、空港周辺の騒音などへの配慮から、速さよりも、経済性、安全性、快適性が重視されるようになってきています。

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