無人航空機で次の時代へ飛ぶには・・・

無人航空機の呼称にはいくつかありますが、ロボットを意味する「ドローン」がよく知られているようです。アマゾンがドローン社の無人航空機を採用したことで大きな話題となりました。

可愛らしい手のひらサイズのものから、数十メートルを超える大型機まで多種多様、使われる目的も農業用・輸送用とさまざまです。

このドローンの開発に、最も熱心なのは米軍です。

常に米軍の課題となっていることの一つがテロリスト対策ですが、それに関連して、アフガニスタンやイラクなど、気候が厳しい地域で作戦が行われることがあります。地形が複雑で独特、外部から進入していく人間にとって非常に行動しにくいため、もともと地域に居住しているテロリストにとって有利であることも特徴です。

そこで、無人航空機であるドローンが注目されることとなります。

そもそも人間が行動できる範囲より、航空機が行動できる範囲の方が広いし、無人航空機であれば、険しすぎて人間が登れないような山岳地帯でも、暑さ・寒さの変化が極端な砂漠地帯でも、問題なく行動できます。

実際、アフガニスタン紛争およびイラク戦争では、無人航空機「プレデター」が数多く投入されました。無人航空機を遠隔操作して行う爆撃なら、兵士がケガをする心配もないし、精神的負担も少なくてすむものと考えられていたからです。

ですが人間には、遠くにいる人、会ったことのない人を思いやる気持ちがあります。

現実の戦闘となると、現地で行動していた兵士より、プレデターによる遠隔操作で攻撃を担当していた兵士の方が、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になりやすいことがわかりました。

プレデターは誤爆の確率も多く、作戦に関係のない民間人が巻き込まれる事件が後を絶ちません。

無人航空機は充分に有効ではないことがわかってきたのですが、これまでの軍事航空機の歴史では「有効ではないから開発をストップしよう」となった事例は少ないのです。

開発中止の事例は「少しならある」のですが、現実には、軍事用の無人航空機の開発が中止となることはないでしょう。

その一方、無人航空機の活用の範囲を広げる努力が続いています。

日本のテレビ局の中には、ドラマの撮影などでドローンの活用を試みるところが出始めました。人が乗った航空機を、危険な場所に飛ばさなくてもすむのは無人航空機の大きな利点の一つです。

少しでも物珍しい風景を撮影しようと、無理な撮影を試みるカメラマンがいるものですが、その心配がなくなりました。

災害現場でも、無人航空機の利点は有効に働きます。人が近づくには危ない状況になった現場に行って状況確認ができるし、道路が使えなくなったときの物資の輸送にも便利です。

それに、農業用ドローンにはメリットが多く、注目を集めています。

初めは農地への農薬散布を目的として開発されたのですが、スマホと連係して農薬の散布範囲を適正にできたり、雨天でも広範囲の農地を観察できたりと、次第に応用の幅が広がり、2013年現在、日本の農地で約2500機のドローンが活躍することとなりました。

それ以上に話題となっているのが、輸送各社による無人航空機による配達です。

アマゾンでは2013年から「Amazon Prime Air」を企画。ドローンを使って注文された商品を30分で届けることを目標としたもので、開発にはNASAの宇宙飛行士やMicrosoftの研究者も参加していると宣伝を展開しています。

グーグルはこれに対抗し、2014年に「Project Wing」を企画し、ドローンによって商品を10分で届けると宣伝しました。

実は、ドローンによる配達の対象地域を限定するだけで「30分配達」「10分配達」は可能です。

ですが、そういった安易な宣伝をくり返していたら会社の経営姿勢を疑われますし、個別の自宅への商品配達となれば、ドローンを飛ばす対象地域は市街地や住宅地が多くなることが予想されます。

人の少ない災害現場や農地を飛ばすのと同様に考えることはできず、ドローンの安全飛行の確保が今後の課題となっています。

それに関する試みとして、人とぶつかって事故を起こす心配のない、短距離の海上輸送に限定して、無人航空機による配達を行っているところがあります。

2014年9月からドイツで、観光島にある一軒きりの薬局への配達に限って、重量5kgの無人航空機「Parcelcopter」による配達を行っているのです。

配達を行っているのはDHL、ドイツ本土から7Km離れた景観の良い島で、保養目的の観光客が多く滞在しています。飛行距離は12km、最高速度は64km。薬局で販売される薬に限っての配達ですが、ヨーロッパ初の飛行許可となりました。

一方、フェイスブックは2015年にジャンボジェット機と同等サイズのドローンを開発したいとしています。目的は、インドなどインターネットが普及していない地域でもフェイスブックを使えるようにすること。

機体そのものに太陽光発電パネルを設置すれば、飛行と電波の送受信の両方に必要な電力を確保できて、数カ月から一年飛び続けることができるとして、研究を続けています。

無人航空機には、他にも画期的な側面があります。

インターネットの活況により、誰でもいつでも航空機開発の進展状況を知ることができ、自分の意見やアイデアを発信することもできるようになりました。発信したいから発信したで終わってしまうのではなく、適切な内容を適切な相手に伝達すれば、意見交換も不可能ではありません。

こういった状況となったことは、航空機の歴史が始まって以来、おそらく初めてのことです。

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