ドローン法整備前に調査されたドローン市場予測は信用するに値するのだろうか

市場調査会社シード・プランニングは、2015年4月に『産業用無人飛行機・ヘリコプターの市場予測』を発表しました。この調査は、所謂無人機の需要や市場規模などを予測したものです。

それによると、2015年に16億円規模の無人機市場は、5年後の2020年には10倍以上の186億円になるとされています。

ただ、この調査で不思議に思えるのは以下の分類です。シード・プランニングはこの調査の対象である無人機を3つに分けました。

1.ドローン
2.UAV(無人航空機)
3.マルチコプター

マルチコプターというのは、複数のローターを持つヘリコプターのことで、その定義上、無人・有人であることは問いません。実際、ドイツの企業が有人マルチコプターを開発しています。ただ、現在のことろ、無人の複数ローター機を指すことが多いようです。

ドローンとUAVは同じものです。この2つに定義上の明確な違いはありません。日本のマスコミなどはよくドローンを「無人の小型マルチコプター」と説明していますが、それはドローンの一種でしかありません。無人機であれば小型でなければいけないということもなく、例えば米軍の無人偵察機もドローン、もしくはUAVだし、農薬散布用のラジコン飛行機やラジコンヘリコプターもドローン、もしくはUAVです。

日本人はどうも言葉の定義を明確に知らないまま使ってしまうところがあるようです。例えば「パスタ」。パスタは小麦粉を練って作った食品の総称で、スパゲティもマカロニもラザニアもパスタですが、日本ではなぜかスパゲティの別名のように使われています。

しかし、スパゲティをパスタと呼ぶのは、うどんを麺と呼ぶようなものであり、間違いではないとはいえ、大雑把すぎます。つまりスパゲティを食べた時に「パスタ食べた」というのは、うどんを食べてもそばを食べても「麺食べた」というのと同じ大雑把さで、おそらくそばを指して「麺」と言う人はいないのと同様、スパゲティを指してパスタと言うのはいささかおかしいわけですが、そこを突き詰めて考えた人はいないでしょう。

今回のドローン、UAV、マルチコプターという分類もそのような日本独特の「印象頼み」のいい加減さを感じます。ドローンとUAVは同じものだから分ける意味がわからないし、無人飛行機の調査というのであればマルチコプターは「無人マルチコプター」とすべきであるとともに、「無人マルチコプター」はドローンもしくはUAVという大きなくくりと並列表記されるべきものではないからです。

これがどれだけおかしい分類かを、わかりやすく例えてみると、「スイーツ調査」で

1.スイーツ
2.甘いお菓子
3.ケーキ

という分類をして調査したようなものといえるでしょう。

ドローンについては、首相官邸への墜落をきっかけに、多少ヒステリックな規制論が噴出しています。法整備が必要なのは確かなので、早急なルール作りをしてほしいとは思いますが、飛行制限地域をどうするか、免許制もしくは届出制にするか否かなどによって、国内での普及の仕方はまったく違うものになるはずです。

そこを踏まえず、また分類になっていない分類によって行われたこの調査は、信用するに値するものかという疑問を感じます。

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