Amazon Prime Airの実現にむけて調整が進行中

2015年3月19日、FAA米連邦航空局(Federal Aviation Administration)はAmazonの無人航空機いわゆるドローンに実験的耐空証明を発行しました。

これによって、Amazonが商業利用を予定しているドローン活用に関して、現状を打開する大きな突破口を開くことが期待されていますが、実際にはこの実験的耐空証明では大きく前進とはいかないような状況です。

Amazonは今回耐空証明を取得したことにより、新しいドローンの研究開発やオペレータの訓練などを目的とした試験を実施できるようになるとのことですが、まだこの段階では商業利用については認められていません。

FAAがSection 333に基づき認めている“適用除外”により、一部のドローンオペレーターは危険性の低い管理された環境下においての商業目的での飛行が許可されていますが、今回Amazonに発行された耐空証明は根本的に異なっているようなのです。

FAAは、特定のドローンを商業目的で利用するための申請に対して、ケースバイケースで許可を与えているとのことで、例えばハリウッドスタジオや、不動産仲介業者に所属するカメラマン、工場や鉄道インフラなどの空中査察を行う企業、地図製作や精密農業などの作業などに対するドローンの商業飛行が認められていて、FAAによれば2015年3月13日現在で48件の申請が許可されているとのことです。

一方で、今回Amazonが取得したFAAの耐空証明については制限事項が非常に多いとされており、結果としては同社が望んでいた内容からは程遠いものと思われます。

また、Amazonに認可された実験的耐空証明に対しての批判もあり、中には「非営利目的の自家用飛行機のオーナーが、セスナ機での飛行を申請する場合に必要な文書の内容と同じだ」とその厳しさを批判する声も上がっています。

このように制約が大変多い認可のようですが、今回FAAの実験的耐空証明を受けたことにより今後はドローンの試験を屋外で自由に行えるようになるため、Amazonにとってはささやかな勝利といえるようです。同社はこれまで、シアトルの本社近くにある屋内試験場においてドローンの試験を行っていた他、アメリカ国外での屋外試験を開始したばかりだったからです。

しかしながら、屋外での試験飛行についても形式的な規制が数多く盛り込まれています。

FAAは「上空400フィート(約122m)以下を、日中の有視界気象状態においてのみ飛行可能」と定めている他、オペレーターの目が届く範囲内での飛行に限定することや、パイロット免許証の取得を求めるなど、既存の規則も引き継がれているとのことです。

FAAによると、この制約の理由は「実際に航空機を操縦するパイロットは少なくとも、自家用機パイロット免許と、医師の診断書を取得しなければならないためだ」とのことです。

また、FAAは全てのドローンに関する実験的耐空証明と同様に、Amazonに対しても月報データの提出による報告義務を課しています。

月報データの内容は、実施した飛行回数や飛行1回あたりのパイロットの勤務時間、ハードウェア/ソフトウェアの故障の有無、航空管制官の指示に対する違反の有無、想定外の通信切断などの項目とされています。

ドローンの規則制定案に関する告示についての意見調査期間が終了した後にFAAが最終規則を策定する予定としていて、Amazonがドローンを使用して将来的に何を実現することができるかはその最終規則の内容に左右されることとなりそうです。

FAAの提案指針は、アメリカ国内におけるドローンの商業利用についてを定めるもので、業界全体が長らく待ち望んできた規則です。

小型ドローンの商用利用を推進する「Small UAV Coalition」(3D RoboticsやAmazon Prime Air、Google X、Parrotなどのドローンメーカーを代表するロビー団体)は、同団体のWebサイトにて「商業利用を許可する最終規則が策定されるまでには、今後約16カ月間を要するとみられる」との見解を示しています。

Small UAV Coalitionは当面の間、FAAに対してSection 333の適用除外に関する手続きの緩和を求めていくとしていますが、「FAAは48件の適用除外を認めているが、その一方で650件以上がまだ申請待ちの状態だ」との現状を公式文書で訴えています。

現在のところ、アメリカ国内において商業目的のドローンを合法的に操縦するためにはこの適用除外を受ける以外に方法はないそうです。

またSmall UAV Coalitionは、FAAとの積極的な協働作業によってFAA規則案における問題点の明確化にする取り組みも行っています。

提案指針に欠けているもの

FAAの提案指針には、ドローンを利用して注文から30分以内に荷物を配達するという「Amazon Prime Air」の夢を実現する上で必要となる5つの重要な要素が欠けているといいます。

1点目は、FAAの提案指針では、ドローンの操縦に直接携わっていない人々の上空を飛行することが認められていないという点で、これによりAmazonのドローンは小さな町の上空を飛行するだけで何度も法律に抵触することになり、到底合法的に配達するということは不可能なのです。

2点目は、Small UAV Coalitionが指摘するように、「FAAの提案指針は、メーカー各社が自社施設付近の私有地で試験を実施することを許可するかどうかを定めていない」という点で、Amazonにとって実際の現場で厳密な試験を実施するための許可を得られない限り、荷物を配達するドローンをどのように実現するかを検証することは困難を極めることになるでしょう。

3点目は、飛行時間の制限に関して、提案指針によると飛行可能時間が日の出から日没までの時間帯のみに制限されていますので、注文から30分以内にドローンで配達することができない時間帯が出てくることになります。

4点目と5点目はドローンの最大飛行高度とオペレータの目視範囲外の飛行エリアに関する制限事項で、提案指針によればドローンの飛行高度は地上500フィート(約152m)までで、且つオペレータの視線が届く範囲内に制限されていることから、例えばニューヨークのブルックリンからマンハッタンどころか、シリコンバレーのサニーベールからサンタクララまででさえもドローンで荷物を配達することは不可能ということになります。

Amazonをはじめとする企業各社を代表するSmall UAV Coalitionは、目視範囲外の安全性を確保するための技術を実現したとしていて、「ドローンが目視範囲外を飛行できるようにならない限り、他の国々が既に実現しているように、技術を最大限に高めることができない」と主張しています。

非現実的な規則によりドローンの可能性や将来性が大きく制約を受けることがないような指針の制定が期待されます。

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