マレーシア航空機の失踪を受けイリジウム社が3年後をめどに航空機衛星監視サービスを提供

2014年3月8日、マレーシアのクアラルンプール国際空港を発った北京行きマレーシア航空370便が、タイランド湾上空で消息を絶ってから半年以上、各国が懸命に捜索し、中国が介入することで様々な憶測を呼ぶなどいろいろな出来事がありましたが結局いまだ見つかっていません。

そうした状況の中、アメリカの衛星通信サービス会社・イリジウムコミュニケーションズは、子会社の衛星ベンチャー会社・エアリオンによる緊急航空機追跡サービスの提供を2017年から開始すべく、取り組みを始めました。

現在の地上レーダーシステムだと、海上などにはレーダー波が届かず航路によっては追跡不能な空域が存在します。今回エアリオン社が導入しようとしているのは、親会社・イリジウムが運用している人工衛星のネットワークを利用して、パイロットや地上管制官に地上レーダーでは探索できない範囲の正確な位置情報を提供し、地上レーダーによる穴を補完しようというものです。

このシステムが実現されると、飛行中の旅客機が海上をギリギリに安全な距離まで接近して飛行したり、海上に発生している嵐を避けるという柔軟な運用ができるようになります。エアリオン社はこうしたことで無駄のない飛行が行われると、北大西洋横断ルートに限っても年間1億2500万ドルは節約できるようになると見ています。

また、24時間体制の情報センターを開設し、今回のマレーシア航空機のように消息を絶ったり、通信が途絶えた飛行機が確認された最終地点の位置情報も提供していく予定です。

これまでイリジウム社は、航空機追跡サービスを緊急時にエアリオン社が収集した情報を提供するという限定したサービスに限っていました。しかし、マレーシア航空370便の事件後、いくら探しても残骸の一部すら見つからない状況を受け、エアリオン社長兼CEOドン・トーマは、航空会社や救助隊などに合法かつ適切な情報を無償で提供する方法を考えるべきであるという新たな選択肢に至りました。

エアリオン社は今後1年かけて技術や運用方法、法律関係などの処々の問題を詰めていき、サービス開始を目指すといいます。

このサービスは、航空機が常に現在位置と高度を発信する「ADS-B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast)」システムを装備した旅客機に対して行われます。「ADS-B」システムは現行のほとんどの航空会社の旅客機が装備しており、装備していない会社も暫時装備していく予定です。

「ADS-B」システムを利用したサービスとしては、世界中の民間飛行機の状況をリアルタイムで確認できるwebサイト「フライトレーダー24」などがあります。

エアリオン社は、その飛行機がエアリオン社の顧客会社のものであるか否かは問わずこの緊急航空機追跡サービスを提供していくと表明しています。このサービスには各国の航空交通管制組織も注目しています。

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