航空料金の変遷と航空会社にとっての今後のライバルとは

確か1996年頃のこと、友人の結婚披露宴に出席するために東京から福岡まで飛行機で行ったことがあります。その時新橋の金券ショップで購入した往復チケットは5万円。それでもまだ安いほうでした。それに比べれば今は安くなりましたね。JALやANAでも2万円台、LCCだと最安値で往復10,000円を切ることもあります。

規制に保護されていた日本の航空業界

かつて、航空会社は規制によって保護されていました。それは、戦後に作られた航空産業を秩序化し、発展させるためでした。確かに、航空産業という国にとっても重要な産業を、航空需要がまだ少なかった時代に最初から自由競争状態にしてしまっては、発展する前に共倒れしてしまう可能性もあったかもしれません。ですからこの規制は確かに必要なものだったと言っていいでしょう。

そのころ、日本には日本航空、全日空、日本エアシステムという3つの航空会社しかなく、また新規参入は禁じられていて、日本の航空産業はその3社の独占状態でした。

ただ、航空料金が高かったのは規制のせいかというとそうではありません。むしろ、当時航空行政を管轄していた運輸省(現国土交通省)は、保護状態で独占状態なのをいいことに、航空会社が料金を自由に設定できないよう監視し、料金設定は運輸大臣による認可が必要でした。

その状況に変化が訪れたのは1986年。その年は、高度成長時代以降経済的に発展してきた日本が、とうとうバブル景気に突入した時代に重なります。当時、国内の航空需要が急速に増加していました。政府はこれ以上の保護は不要であると判断し、規制緩和へと舵を取ります。

価格競争のはじまり

規制緩和は、当初既存3社の間での自由競争は認められたものの、新規参入はまだ認められていませんでした。しかし、段階的に緩和の幅が広げられ、ついに1997年には航空業界への新規参入の門戸が開かれました。それを受け、航空業界に新しく誕生したのがスカイマークとエア・ドゥ。

特にスカイマークは新規参入につき格安料金を武器にしてきました。現在のLCCほど格安とはいえないものの、当時スカイマークが提示した料金は、確かに画期的な安さだったといえます。スカイマークは便数こそ少ないものの大変な人気を得て、日本国内での飛行機利用者数を押し上げました。

それに対し、JALとANAも対抗。料金を引き下げにかかり、ここに本格的な価格競争が始まります。

航空運賃自由化

国内の航空運賃は事実上競争状態にありましたが法的にはまだ規制がありました。それが、2000年の航空法改正により法的にも自由化されました。それ以降、各航空会社は例えば誕生日を中心とした前後数日を割引したり、チケットのバーゲンなどを行うようになりました。

JALの早割(現先得)、ANAの特割といった、早期予約・事前予約による割引料金もこのときに誕生しています。

自由競争での利益確保

かつて規制によって保護されていた時代の航空会社は、客単価を上げる事で利益をあげようとしていました。だからこそ、政府が料金の高騰を防ぐ必要があったわけです。

しかし、自由競争になってからは客単価を上げようとすれば競合他社に客をとられるだけ。そこで取られたのが一便ごとの利益を増やすということでした。これは単純に言えば空席を極力なくすということ。例え割引料金でも空席で空気を運ぶより、一人でも多くの乗客を乗せたほうが利益があがります。

ここで役立ったのが、JALとANAが長年蓄積してきた旅客数データ(日本エアシステムはこの時点でJALに統合済み)。つまり、路線や曜日、時期などの乗客の利用数変化に応じ、需要が多い時には料金を上げ、少ない時には割引率を高くするという柔軟な料金設定を行うことで、平均して空席数を減らしていくことができたのです。この部分では新規参入のスカイマークより、既存の2社が有利であったと言えるでしょう。

自由競争を重ねることにより、この料金設定はさらに成熟していきます。例えば、国内路線でも羽田から北海道や京都、沖縄などに向かう便は観光需要が多くなり、羽田-大阪間はビジネス利用が多くなります。そうした需要の違いは、利用者が増えたり減ったりする時期の違いともなるため、それぞれに対応。

国内路線では、同業他社よりも公然と航空路線に対抗してきている新幹線という強大なライバルが存在します。新幹線と競合する路線ではそれも考慮した料金設定もするようになりました。

このような細やかな分析と料金設定により、航空各社は自由競争の中で利益を確保してきました。しかし、LCCの登場で極端に料金が下がってきている現状では、既存各社は価格を下げるよりむしろシートの改良による座席空間の拡大など、乗客の満足度を上げる事でLCCとの差別化をはかってきています。

既存航空会社にとって本当に脅威なのはLCCではなくリニア新幹線かもしれません。リニア新幹線が運用されるようになり、それが大阪やその先にまで延伸されるようなことになれば、航空会社が新幹線より有利な点として挙げている移動時間というアドバンテージが小さくなります。その時にはさらなる競争が要されることになるかもしれません。

関連記事

おすすめ記事

ページ上部へ戻る