ボーイング社が「バリアー」の特許を取得

「バリアー」というと我々日本人には『マジンガーZ』の昔から、ロボットアニメやSFアニメでお馴染みの存在。敵の攻撃を防ぐ頼もしい防壁であり、また、限界を超えた攻撃を受けると、なぜかガラスのように砕け散るという演出は、現在に至るまで受け継がれています。

ただ、バリアーというのはあくまでアニメの世界での架空の防御設備であるという認識があったことは確かです。ところが、2015年になってアメリカのボーイング社が「電磁バリアー」技術の特許を取得したという情報が流れました。

といっても、これはアニメの世界のバリアーのように、どんな攻撃も跳ね返してしまうというものではなく、至近距離で爆発が起きた時などに発生する衝撃波をやわらげるためのもののようです。

これはレーザーを利用したシステムで、レーザー発振機により発生する「超短パルス」、つまり人間には認識できないレベルの短時間に繰り返される光の波により電磁波の放電現象を作り、それによって衝撃波を分散させたり、吸収したり、屈折させて減衰します。ものすごく大雑把な説明をすれば、自分に向かって強い風が吹いてきた時に、すごい力でこちらからも仰いで風の勢いを消すようなもの、とでもいえるでしょうか。

風の例で言えば、風を吹き返して勢いを殺すことはできても、看板が飛んできたら防げないというのと同じで、衝撃波を弱めることができても、実弾の直接攻撃を防ぎ止めることまではできないようです。

戦車の車体などに砲撃や爆発を受けた時に、こちら側からの衝撃力で相殺してしまうという技術としては「爆発反応装甲」というものがあります。これは、二枚の鋼板の間に爆発物を仕込んでおいて、そこに衝撃を受けた時に内側からの爆発の勢いで、外からくる衝撃を和らげるというものです。

ただし、爆発反応装甲は戦車のような密閉型の兵器でないと使えず、また戦車の付近に味方の兵がいると、爆発に巻き込んでしまうというリスクもあります。

そのような爆発反応装甲の欠点を補う装甲として現在研究されているのが、電磁装甲です。これは、装甲板の上にセンサーを備えたコイルや放電システムを設置、その上に金属板を置いて、着弾の瞬間に金属板を弾き飛ばし、直撃による攻撃の貫通を防ぐというものです。

アニメのバリアーのイメージに近いものとしては、隙間を開けた二枚の装甲板に敵弾を受けた瞬間、大出力の電流を流して敵弾を溶かしてしまうというものもありますが、これも研究中であり、本当に実用化されるかどうかは不明です。

実用化され、実際に配備されている防御兵装としては、敵の攻撃を「弾幕」で迎え撃つというもの。これはイスラエル軍が戦車に装備している「トロフィー」というシステムで、実戦で対戦車砲の迎撃に成功したといいます。ただ、「トロフィー」も爆発反応装甲と同様、戦車の付近に味方兵が居た場合は巻き添えにしてしまうというリスクがあるので、宇宙空間での「弾幕薄いよ、何やってんの」というノリと同じようには使うことができません。

いわゆる反戦平和主義者が言うような、武器がなければ戦争が起こらないなどということが現実にはありえない以上、こうした防御兵器の開発は必要ではあるのでしょうが、結局のところは孫子が言うように戦う前から勝敗を決し、極力損害を抑えるというのが一番いいのでしょう。

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