航空日誌は「飛行機の交換日記」!?

昔は、パイロットが大きく重いかばんを持って、さっそうと空港を歩く姿を見かけたものです。あのかばんには、必要な航路図や各種マニュアル、もちろん「航空日誌」も入っていました。

航空法には「航空日誌」について、次のように書かれています。

「航空機の使用者は、航空日誌を備えなければならず、航空機を航行の用に供したとき又は整備、改造した場合は、遅滞なく記載しなければならない」

この航空日誌に書かれているのは、航空機の戸籍や住民票みたいな内容です。

国籍、登録記号、登録番号、登録年月日、型式および型式証明書番号、耐空類別および耐空証明証番号、製造者、製造番号および製造年月日。さらにここに、フライトのたびに「飛行年月日、乗組員氏名、飛行目的、飛行の区間または場所、飛行の時間または回数、飛行の安全に影響のある事項」を書いていきます。

「飛行の安全に影響のある事項」は、文字通り、パイロットが飛行中に感じたこと、エンジンの異常や、計器の動作のようすなど、気になることがあったら書いておくところです。とくに気になることがなければ、無記入となります。

機体が空港に帰ってくると、整備のために、整備士がコックピットに入りますが、まずやることが「航空日誌の記録を確認すること」。ここで先ほどの「飛行の安全に影響のある事項」が役に立つのです。

ここになにか書いてあれば、問題がないことなのか、点検や修理をしたほうがいいのか判断し、次のフライトまでの限られた時間内に、必要な作業を行わなければなりません。

それで行った修理、改造または整備の実施に関する記録も、航空日誌に書き込まれることになります。実施年月日、実施の理由、個所および交換部品名、作業が完了したことを確認した年月日も書いて、その確認を行なった整備士がサインします。

次のフライト時間が近づいてきて、パイロットが出発前のコックピットに入ったときも、まず航空日誌の確認です。機体の整備状況を知った上で、離陸することができます。「整備士による出発前の点検が、すでに済ませてあります」とか。「ジャンボ機の定期整備・A整備を、昨日行ってあります」とか、そういった内容です。

ほかにも、修理や部品交換をしたのであれば、それがちゃんと動くか、パイロットのほうでも確認しておかなければなりません。出発前に問題なくても、飛行中も時々は様子を見て、その結果を航空日誌に書いておきます。

「飛行中、新しい部品は問題なかったよ」とかを記録するわけです。

要するに「航空日誌」は、旅客機について書かれた「交換日記」のようなものです。パイロットと整備士の間で「今日の飛行機の様子はこうだったよ」と、お互いの意見を交換しておくと、仕事の役にたつからです。

整備士は整備した部品がちゃんと動作したか、使ってみたパイロットがどんな感想だったか、知りたいものです。整備したところが問題なかったと書いてあれば、安心です。パイロットも、フライト中に気になっていた部分を修理しましたよ、と日誌に書いてあれば、ひと安心です。

旅客機はいつも同じ姿をしているように見えますが、日々、人が調子を見ては整備して、常に安全性を維持しているのです。この「航空日誌」ですが、最近「エレクトロニック・フライト・バッグ
(EFB)」が採用されて、重いカバンを持つことがなくなりました。パイロットも整備士も、コックピットに入ったらまず、このEFBから「メンテナンスログ」を開いて、飛行記録や整備記録を確認します。

関連記事

ページ上部へ戻る