LCC、価格とサービスの2極化とこれからの行方

LCCの普及で空の事情は大きく変わり、航空業界では価格とサービスの2極化が激しく進んでいます。利用者側も、社会情勢として様々なニーズがあり、画一的な対応では、これらのニーズに応えることができなくなりました。

航空業界でも同様で、利用者側からみれば、自分のニーズに合わせて選択ができるようになったのは嬉しいことです。ビジネスや旅行で飛行機を利用する際に、料金が高くても洗練されたサービスを受けたい、機内でゆったり快適に過ごしたいと、空の旅も楽しみながら移動したい人もいるでしょう。

逆に、サービスは必要ない、目的地に安全に着ければいい、とにかく安く移動したいという人もいるでしょう。こうしたニーズに、大手は大手なりの、LCCはLCCなりの戦略を追求しています。

大手は、収益の80%を生みだす上級クラスに的を絞り、サービスの向上に力を入れています。座席数でいえばエコノミークラスのほうが圧倒的に多いにもかかわらず、上位2割の乗客をターゲットにしています。

大手にとって、LCCが仕掛けてくる低運賃に対抗するには限界があります。まして上級クラスに占める収益率の割合が高いとなれば、サービスの高さを望んで、高い料金でも喜んで払ってくれる人たちに重きを置くのは当然といえるでしょう。

そこで、安さではかなわなくても、機内サービスを一流ホテル並みに、機内食も一流レストランや一流シェフとタイアップしてメニューを開発したりと、プレミアムなサービスにますます磨きをかけています。

一方、LCCは、徹底的なコスト削減に注力を注ぎ、残る8割の層をターゲットに、次々とアイデアをだし、十分な利益を確保しています。このように、LCCと大手は、それぞれタイプの異なる空の旅を提供しています。

では、両者は一体どういった関係なのでしょうか。お互いに敵対意識を抱いているのでしょうか。それとも、共存関係を築いているのでしょうか。

LCCというと、ジェットスター航空も有名ですが、豪州の大手航空会社、カンタス航空が設立したLCCで、2004年の初就航後、急速にアジア地域で勢力を増しており、日本では豪カンタスグループとJAL、三菱商事などが出資してジェットスター・ジャパンを設立、2012年に国内線を就航しました。

日本-豪州路線や国内線ではJALと共同運航しており、国際線同様、JALとマイレージの提携もしています。

JALとの連携にみられるように、大手航空会社との提携は、ジェットスターグループの重要な取り組みの1つで、他のLCCとは異なるビジネスモデルでシェアを広げてきました。

この、ジェットスターグループの前CEOで、現在はカンタスグループのコンサルタントを務めるブキャナン氏は、「ジェットスターの成功の秘訣は、大手航空会社との提携にこそある。大手航空会社とLCC、それぞれの異なるビジネスモデルを違いに補完するノウハウを、ジェットスターは持ち合わせている。ネットワークの相互利用や、顧客の相互送客、共同運航や乗り継ぎの協業などで、大手航空会社の力をうまく生かしてきたからこそ成長を遂げられた。日本でもJALと互いに支援し合い、互いのインフラや顧客、ネットワークを活用し合うことができれば、ジェットスター・ジャパンは間違いなく日本でも成功するだろう。」と述べています。

世界の航空業界では、大手航空会社が設立したLCCは失敗しています。これはLCCが独立したビジネスモデルを構築することができなかったためだといわれています。

LCCが、親会社となる大手航空会社のシェアを奪ってしまってしまい、それに対抗しようと大手航空会社のサービス内容がLCCと似てしまい、明確な差別化が図れなかったのです。

そのため大手航空会社とLCCの間で共食いが起こってしまいました。似たようなサービスを提供していれば、当然、安い運賃の方が競争力は高まります。

その点ジェットスターグループは、親会社であるカンタス航空から完全に独立して運営されており、それも成功の秘訣だと同氏は説明しています。

人それぞれ価値観が違います。

世界の流れをみてみると、これからはお互い敵となって潰しあったり奪いあったりするのではなく、お互いがいいライバルとなって、補完しあったり、お互いに伸びていく、そういう関係で業界全体がいい方向へ向かっていくといいですね。

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