多くのLCC同様、ピーチが選択したA320とは
世界中のLCCが使用している大きな機種は、エアバス社のA320とボーイング社のB737です。
ここではピーチが選択したA320について、詳しくみてみたいと思います。
A320は欧州AirBus社が製作した近・中距離向けの商業旅客機です。その特徴はデジタル式フライ・バイ・ワイヤ制御システムを民間機として初めて採用したハイテク旅客機で、サイドスティックによる操縦を採用しています。
座席は150席程度の単通路型機で2クラスあります。
また、バリエーション、つまりA320ファミリーとして、新エンジンを採用したA320neo、短胴型のA318・A319、長胴型のA321があります。
エアバス社のA320ファミリーを採用している航空会社として、エールフランスやANA、ピーチ、スターフライヤーなどがあり、1987年以降、26年経った今でも拡大を続けています。
受注数としてはボーイング737シリーズには及びませんが、2013年10月31日時点で、13500強の受注が確定しています。
エアバス社開発の機体に共通して搭載されている技術にフライ・バイ・ワイヤ(FBW)があります。FBWは、ハイテクジェット旅客機や最新の戦闘機に使われている技術で、常に自動飛行制御システム(AFCS)を介して飛行機を操縦する方式です。
在来の飛行機では、パイロットは操縦桿やペダルによって人力、あるいは油圧で舵を動かしていましたが、FBWでは操縦桿やミニスティックを通じて、機体の姿勢や旋回などの指示をAFCSに入力します。そうするとパイロットの操縦操作を電気信号に変換し、コンピュータが飛行のための最適な数値を計算してくれます。
この技術は、従来は戦闘機にのみ使用されていましたが、エアバス社が初めて民間機に採用し、以後、エアバス社で開発されている他の機種でも搭載されるようになりました。
また、この技術のおかげで従来の操縦桿にかわり、サイドスティックを採用できるようになりました。
A320や、そのファミリーに導入されたフライ・バイ・ワイヤやサイドスティック操縦桿は当時から新しい技術として注目されていました。実用開始から20年以上経ちましたが、今でも先進のシステムとして、エアバス社が出す全ての製品群に一本化しています。
現在、エアバス社は、航空機のサイズから利益性、快適性、環境効率性における市場のニーズを捉えた最新鋭中型機、A350XWBを開発していますが、このFBWも勿論、受け継がれています。
このようにエアバス社では後から開発される機体にも一貫して同技術を導入しています。これは同じシステムを採用することで、操縦技術の共通化をはかり、パイロットの訓練の時間やコストを節約できる、というメリットがあります。
この、機種間の共通性、というのがエアバス機の最大の強みとなり、多くのパイロットから支持を受けています。
このエアバス社はフランスの企業ですが、部品のサプライヤとしては、エアバスのベストセラーとなっているA320ファミリーに合計12社の日本企業が参画しています。代表的なものとして、東レなどが炭素繊維を提供しています。
また、2通路型機のA330ファミリーでは合計12社が参加しており、住友金属工業などが参画、さらに、エアバスの全機種には、ブリヂストンがタイヤを供給しています。
また、前述の最新鋭中型機A350XWBプログラムには合計で4社が参画しています。
総2階建て次世代大型機A380でも日本から17社が参画。
たとえば三菱重工業は下部デッキの貨物ドアを、富士重工業が垂直尾翼を提供しています。
これらの日本企業がエアバス機のプログラムに参画することにより、欧州と日本の航空機産業界における協力体制が一層拡大してきています。