パイロットが恐れる魔の11分間とはいったい何?

航空機事故の発生確率が高いのは、離陸時と着陸時。

ICAO (国際民間航空機関)の統計では離陸時が21.5%、着陸時が48.3%。このことから、離陸滑走開始後の3分間と着陸前の8分間を合わせた11分間を「魔の11分間」と呼んでいます。では、着陸前の8分間、コックピット内はどのような状況にあるのでしょうか。

まず、目的地の空港が近づくと、地上の航空管制官から「降下」の指示がきます。空港が近づいたからといって、パイロットが自分の意思で機体を降下させることはできません。あくまで管制官の指示に従うことになっています。

「降下」の指示を受けたパイロットが、自動操縦装置に降下させるべき高度を入力すると、自動的にエンジン出力が絞られ、機体が降下を開始し、減速します。旅客機が空港周辺に近づいたら、巡航速度の半分程度(時速450~500km)まで落とし、着陸直前にはさらにもう半分の時速250kmぐらいまで減速させるのが一般的です。

このあいだ、パイロットはフラップを出したり、着陸のために車輪を降ろしたりといった操作も行ないます。フラップや車輪の操作は手動でしか行なえないので、自動操縦による着陸であっても、パイロットはやはり忙しいのです。こうした最中に何かトラブルが起きると、小さな火種でも大火に発展しかねないことが想像できます。

管制官から指示された滑走路への進入コースへと機体を運べば、あとは空港の計器着陸装置(ILS)から発信される電波の道(高度30mまで誘導)をたどりながら着陸すればよいのです。このILSのおかげで、空港の天候が悪く、視界があまり利かない状況でも、安全に着陸することが可能になっています。

それでも最後の最後、機体を接地させる直前には、パイロットが滑走路を目視しなければならないと定められています。もし、規定の高度まで降下しても滑走路が見えなかったら、パイロットは着陸をやり直さなければなりません。

滑走路を目視で確認しなければならない高度は、空港の施設、旅客機の機種、パイロットの資格によって異なります。したがって、同じ空港の同時刻、同じような天候状態という条件下でも、着陸可能な旅客機と着陸不可となる旅客機が出てくるわけです。

着陸は何度かやり直しがききますが、天候の回復が望めない場合は、燃料があるうちに別の空港に降りることになります。最悪のケースでは、出発地の空港まで引き返すということもあります。目的地の空港を眼下に見ながら、そこを立ち去らなければならないのは残念ですが、強行着陸して事故を起こすことを思えば、仕方ないといえるでしょう。

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