パイロットが選ぶ、世界一美しいフライトとは?

「いちばん美しいフライト」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。眼下一面に広がるエメラルドグリーンの大海原の上を颯爽と飛んでいくような、あるいは夜間に100万ドルの夜景を見下ろしながらの着陸を行なうような・・・それも確かにあるでしょう。

しかし、多くのパイロットが「最も景色が素敵なルート」としてあげるだろうというのが、「ポーラーフライト」です。

「ポーラー(polar)」とは「極(地)の」という意味で、「polarbear」は「北極グマ、シロクマ」、「polarstar」なら「北極星」となります。つまり「polarflight」とは、「北極まわりのフライト」を意味します。

かつて、その領土上空を飛ぶ許可が下りなかった旧ソ連時代には、ヨーロッパ方面に行くためのルートとして、アンカレッジ経由の北極通過というルートが大いに利用されていました。スケジュールとしては、夜に成田空港発、ヨーロッバ到着が翌朝というもので、当時では最も所要時間の短いコースでした。このフライトでは経由の関係上、深夜にアラスカ上空を飛ぶこととなり、かなりの確率で「自然が生み出す神秘のカーテン」に出会うことがあったとか。

そう、いわゆる「オーロラ」です。漆黒の夜空に優雅に揺らめく、赤や緑など色とりどりの光が織り成す「大自然の荘厳な演出」、それをコクピットから見られるのは、ポーラーフライトを飛ぶ者の特権ともいえます。実際、パイロットですら、カメラ必携のフライトだったといいます。

さらに以前のフライトでは、必須なのはカメラだけではありませんでした。当時、国際線の客室乗務員を務めていた日本の知人によれば、ポーラーフライトを飛ぶパイロットには、「ある訓練」が必須だったそうです。

その訓練とは・・・なんと、ライフルなどの銃の取り扱いです。万が一、北極に不時着した場合でも、アザラシやセイウチなどから乗客の身を守り、安全に避難誘導を行なうため、こうした「特殊技能」が要求されたそうです。ただし、現在では、そうした訓練は行なわれていません。

1980年代後半からすすめられた政治体制の改革運動「ペレストロイカ」によって、シべリア上空が他国の航空機にも広く開放されました。これ以降、現在のようなヨーロッバ直行便が主流となり、日本発のポーラーフライトはなくなっています。現在ではニューヨークなどアメリカ東部から日本へのフライトなどで、北極付近を通過する最短フライトが実現しています。もし、乗る機会があれば、寝る間を惜しんでラッキーな出会いを夢見てほしいものです。

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