意外と大切!?飛行機のバランスと重量配分

どんな旅客機でも、乗る前に搭乗手続きをします。

ともかく搭乗手続きしなければ乗せてもらえないのですから、私たちはなんとなく手続きに応じますが、ではそもそも、なぜ搭乗手続きを行なうのでしょうか。

まず、旅客機の重量が重くなりすぎないようチェックするという意味があります。旅客機はとても大きいので、どんなに荷物を入れても大丈夫そうに思えますが、実際にはどこまでも乗せられるというわけではありません。

それと、機体の重心位置を調整するという大切な目的があります。乗客と貨物の重量を上手に配分しておかないと、旅客機の前後・左右のバランスが取れなくなります。

飛行機は大きくても小さくても、飛行中にバランスを取ることは欠かせません。どんな飛行機も、たとえば紙飛行機でも、つねに重心の位置を維持していないと、安定して飛ぶことはできないのです。

旅客機の機体を、糸かなにかで、上から吊り下げた状態を想像してみてください。機体のどこかに糸をつけてぶら下げると、旅客機は傾いて、不自然にぶら下がってしまいます。中に乗せた荷物の重量があちこちに偏っていると、実際の旅客機でも、同じことになってしまうのです。

もしこうなったら、飛ぶどころではなくなってしまいます。

糸をつける位置をいろいろに変えて試してみると、機体が前後、左右に傾くことなく、バランスを保持できるポイントが見つかります。そこが旅客機の重心です。

旅客機の中のあちこちに適当に人や荷物を乗せてしまうと、その重心がずれてしまい、機体の姿勢が安定せず、操縦しにくくなります。機体の強度が保てなくなり、危険なことになりかねません。

搭乗手続きを行なって乗客の座席を決めることは、全乗客を客室全体にほぼ均一に配置し、機体の一部分が重くなりすぎないよう調整することになります。

たとえば、空席が多い便で、客室乗務員から席の移動を指示される場合があります。これは、後方の席が丸ごと空席になってしまったり、乗客のほとんどが右側に座ってしまうといったアンバランスを避けるため。

乗客と貨物を適当な位置に配分するだけでは、重心位置の調整が行なえない場合があります。そのときは「バラスト」と呼ばれる、鉛でできた重心調整用のおもりを使うのです。そういう道具を用意しておくくらい、旅客機の重心は大切なのです。

旅客機は機種ごとに重心位置が定められています。

たとえば、ジャンボ機(ボーイング747)の重心位置は、主翼の上にある、前から3番目のドアのあたりです。重心許容範囲(重心がずれても大丈夫な範囲)も決められており、同じジャンボ機で1.75m前後となっています。

全長70mを超えるような大型機ですが、重心位置が2m以上ずれたらそれだけで飛行に支障が出るのです。

もし、重心位置に異常があれば、コックピットの警報装置が鳴るしくみになっています。ジャンボ機の場合、重心位置が前寄りか後ろ寄りかを感知するセンサーが前輪(ノーズギア)についています。このセンサーで読みとった測定結果に問題があれば、離陸できません。

乗客の席の位置を確認するとともに、貨物の搭載場所を移動させるなどして調整しなければならないのです。

ちなみに、乗客1人が一番前の席から一番後ろの席に移動すると、重心位置は約12mm後ろにずれるといわれています。この数が20人、30人となれば、影響力はさらに大きくなります。

空席が多いと、ちょっと他の席に移動して、別の窓から外を見てみようかなと思ってしまいますが、客室乗務員に聞いてからにしたほうが良さそうです。

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