フライトレコーダー24が航空機のリアルタイム情報を表示できるのはどうして?

民間の航空機の現在位置をリアルタイムでモニターできるサービス「フライトレーダー24」は、もはや航空ファンであれば誰も知らない人はいないでしょう。2009年の公開当初はwebサイトのみで、範囲もヨーロッパのみでしたが、2015年時点でほぼ全世界をカバーし、スマホアプリ版も提供されています。

フライトレーダー24は基本無料で利用できるサービスですが、有料の「プレミアム」メンバーになると広告が非表示になり、全ての機能を利用できるようになります。

サイトを表示すると、地図上に大小様々な大量の飛行機のアイコンが表示され、アイコンの上にマウスポインタを重ねると便名が表示されます。そして、特定のアイコンをクリックすると、画面左側にその便の詳細情報が表示されるとともに、メイン画面にはその便が飛んできた航路のラインが表示されます。

また、左側の詳細情報から「コクピットビュー」をクリックすると、位置情報からエミュレートされたコクピットから見えるであろう情景が3D表示されます。

あちこちの飛行機を見たり、追跡しているだけで時間が経つのを忘れてしまうこのサービス。どんな仕組みでこんなに大量の飛行機の情報を得ているのでしょうか?

それを理解するためには、まず航空機のある決まりを知る必要があります。

航空機が飛ぶ時は、ごく一部を除いてフライトプランを管制に提出し、承認を得なければなりません。フライトプランにはその飛行機自体の情報、機長(軍用機の編隊では編隊指揮官)、行き先など様々な項目が記載されており、記載された情報は「FDP」という管制システムに入力され、個別の識別コードが発行されます。

識別コードが発行されると、機長はそのコードを「トランスポンダ」に入力します。トランスポンダは管制が発したレーダーの信号に返事をするための機械です。トランスポンダがレーダーに返事をするときには、入力した識別コードに加え、飛行中の位置、高度、速度などの情報が発信されます。このトランスポンダが出す信号をADS-B信号といいます。

フライトレーダー24は、このADS-B信号を受信するシステムを構築することで、サービスを提供しています。最初はたった2人の航空ファンが始めたもので、それゆえに情報を提供できるエリアにも制限がありました。しかし、その後世界中の航空ファンが自ら受信したADS-B信号の情報をフライトレーダー24のサーバーに送信するようになり、全世界の非常に広範囲の情報が表示されるようになったわけです。

つまり、最初から商用として作られたサービスではなく、航空ファンが自ら楽しみつつ、仲間同士で情報を共有することで成り立っているのですね。ゆえに、一応ほぼ全世界をカバーしているとはいっても、そのような情報提供がないアフリカの一部地域、チベットやウイグルなど中国の占領地域、北朝鮮などの情報は表示されません。

ところで、そのような航空機から発信される重要な情報を勝手に受信し、それを不特定多数が見られるように提供しても問題ないのでしょうか?

フライトレーダー24によると、ADS-B信号は管制に特定して発信されるのではなく、不特定多数に対して発信されているために問題無いとしています。

実はADS-B信号が不特定多数に発信されるのは、事故防止のために非常に大切なことです。現在民間航空機には空中衝突防止装置が搭載されていますが、その衝突防止のためにADS-B信号の情報を受信して、お互いの位置を参照しているからです。有志がADS-B信号を受信できるのも、そのような事故防止策の余慶を受けているのだとも言え、決して違法行為ではありません。

日本国内の電波法でも特定の相手に対して送られた無線を傍受し、他者に漏らすことは禁じられていますが、その性質上原則不特定多数に発信されているADS-B信号を受信し、公開することは禁じられていないので、日本国内でも問題ありません。

ただし、作戦行動中の軍用機や、要人などが搭乗している機体、あるいは個人所有のプライベートジェットなどは表示されないようになっています。

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