パイロットの作業量を軽減するオートパイロットの歴史

◆パイロットの作業量を軽減するオートパイロットの歴史

ボーイングB-727のオートパイロットをコントルールするパネルには、ノブ1つで飛行機をコントロールすることができるようになっているため、ざっくり言えばB727のオートパイロット“オン”でのフライトは、エアバスA330がオートパイロットを“オフ”にしてサイドスティックで飛行機をコントロールしている状態と似ていると言えます。

けれどもB727のオートパイロットのノブは、きめ細かい速度設定や上昇率の制御ができる設計ではなかったため、速度や上昇率のきめ細かいコントロールが必要な、フラップ上げ操作などが終了するまではオートパイロットを“オン”にできませんでした。

ただ、A330やB777ではコンピューターの発達やジャイロの精度向上のおかげでオートパイロットの性能が格段によくなり、速度や上昇率などの微調整が可能となっているため、離陸初期の段階で“オン”にして、速度、方位、高度、上昇率の微調整をスイッチやノブで行いながら離陸操作を実施することができ、B727よりもはるかに早いリフトオフ直後の低い高度でも、オートパイロットを作動させる運行方式が標準となりました。

精度の高いオートパイロットは、緊急事態発生時にも余裕をもって原因の探求や処理ができるなど、パイロットのワークロード(作業量)を大幅に軽減することができるため、オートパイロットを“オン”にする時期が早くなっているのです。

◆自動推力制御装置におけるサイドスティックと操縦棹の違い

離陸後、オートパイロットを“オン”にすると標準出発方式や航空路上を自動的にフライトしてくれる自動誘導機能(NAVモード)が利用できるのですが、離発着が多い空港では管制官のレーダー誘導により速度、方位、高度の指示が頻繁に出されることがあるため、このシステムは使えず、FCU(フライトコントロールユニット)やMCP(モードコントロール・パネル)により飛行機の速度や方位、高度などをコントロールします。

自動推力制御装置では、A330のスラスト・レバーは一定位置にありB777のレバーはエンジンの推力の変化とともに動きますが、それと同じようにA330が旋回する際にはサイドスティック動きませんが、B777ではまるで透明人間が操縦しているように操縦棹が動きます。

FCUは速度や方位などを選択してオートパイロットをコントロールし、FMS(飛行管理システム)はおもに飛行管理コンピューターからのデータによりコントロールする役割を担っています。

しかし、このFMSへの入出力を行うCDU(コントロール・ディスプレイ・ユニット)でも速度などをコントロールできるものの、入力するときに頭を下げる(ヘッドダウン)ことが多くなってしまい、外部監視やその他の計器の監視ができないため、利用されることはありません。

なお、FCUとFMSではFCUの方が優先順位は高くなっています。

◆FMSによるスムーズなレベルオフへの移行

FMS(飛行管理システム)が装備されていなかったボーイングB727世代の飛行機では、オートパイロットでフライトしていても、上昇から巡航への移行にはパイロットの操作が必要となり、ノブの操作によっては飛行機の機首が大きく変化して不快を感じたり、上昇率が大きい状態で高度維持のスイッチを入れると、急に飛行機の姿勢が変化して乗り心地が悪くなったりしたため、オートパイロットにレベルオフ(移行)するには熟練を要しました。

ところが、FMSが開発されてからは上昇から巡航への移行が自動的に行われるようになり、オートパイロットのコントロールはFCU(フライトコントロール・ユニット)やMCP(モードコントロール・パネル)だけでなく、FMSにより上昇から巡航へのスムーズな移行制御や、巡航速度の算出と制御が可能となりました。

「1000ツーレベルオフ」とパイロットがコールアウトする頃になると、飛行機の姿勢は徐々に機首下げになり、巡航高度に達すると自動的に水平飛行に移行します。そして、エンジンも上昇推力から巡航高度を維持する推力に自動的にコントロールされます。オートパイロットによるこれら一連の操作はとてもスムーズで、客室では水平飛行になったことがわからないほどです。

これにより、方位や速度など頻繁に変化させる必要がある離発着時にはパイロットがパネルを操作し、上昇や巡航時にはFMSで管理することが可能になりました。

関連記事

ページ上部へ戻る