ドローンの様々なリスクと今後の進むべき道とは?

日本ではドローン規制法成立以来、めっきりドローンの話題を聞くことがなくなりました。この規制法はやたら成立が早かったですね。ダガーナイフ規制のときもそうでしたが、日本は臭いものに蓋をすることだけはやたら対応が早いです。まあ、そのせいで根本的な問題は一切解決されていないわけですが・・・。

さて、ドローンがあちこちに落っこちて騒がれていた頃、マスコミがドローンを取り上げる時使っていたフレーズがありますそれは「小型無人機」というもの。日本のマスコミがドローンと呼ぶのは、大抵小型の無線マルチコプターに限られていました。日本では外国語や外来語を正しく理解されずに、適当なニュアンスでわかったつもりになった認識が広く流通しがちです。

だからUAV=無人航空機とドローンが別物であるかのようなおかしな錯誤が発生して、しかも誰も気づかないということが起こるわけです。

そもそもドローンとは?

droneの原意は雄蜂。また、ハチのブンブン飛ぶ音も指しています。そして、そこから集団の中の端末という意味も派生しました。ここで取り上げるいわゆるドローンは、集団の中の端末という派生の意味からさらに派生し、無人機を指しています。

ただし、ドローンというのは無人機=Unmanned Vehicle=UVの愛称というか、俗称に過ぎません。いわば、メキシコサラマンダーのネオテニー=アホロートルに対する「ウーパールーパー」のようなもの。

俗称ドローン、つまりUVには、UAV=無人航空機、UGV=無人地上走行車、USV=無人艦艇などの別があり、航空機には限りません。そしてまた「小型」に限られることもありません。例えば現在アメリカ空軍が運用しているUAV「RQ-1 プレデター」は全長が8mほどあり、民間ではFacebookが旅客機と同じぐらいの大きさのWi-Fiステーションドローンの飛行テストを行っています。

ここから言っても日本のマスコミの「小型無人機」という認識がいかにいい加減なものかわかると思います。オリジナルアニメ作品『PSYCHO-PASS』には、自律人型無人機が登場し「ドローン」と呼ばれていましたが、アニメを制作している人たちのほうが、マスコミよりドローンがなにかを理解しているようです。

ただし、研究者の中には自律無人機は「ドローンじゃねえ!ロボットだ!」と言っている人も。

米軍では無人軍用機をRPV=遠隔操縦機と呼んでいます。ちなみに上述の「RQ-1 プレデター」は55人ものスタッフで運用されているそうです。

「マルチコプター」はおかしい?

日本では主に複数ローターがついたラジコンヘリコプターがドローンと呼ばれています。複数ローター機を「マルチコプター」と呼び、ローターが三つのものはトライコプター、八つのものはオクトコプターといいます。しかし、この呼び方は英語としておかしいという意見もあります。

例えばオクトコプターだと「8機のヘリコプター」という意味になるじゃないかというのがその根拠。ローターの数で区別するのであれば、正しくは「オクトローターコプター」と呼ぶべきということになりますが、まあすでに新しい言葉として定着しつつあるので今更騒いでも直されることはないでしょう。

「UAV」でもない?

研究者の中には細かいこだわりがある人もいて、「Unmanned Aerial Vehicle=無人航空機」ではなく「Unmanned Aerial System=無人航空システム」と呼ぶようです。そもそも「Vehicle」は乗り物という意味ですから、無人の乗り物というのは言葉として矛盾があります。そうではなく、無人の機械を通してそれを運用し、利用する「システム」であるゆえ、たとえばそれが航空機であれば「UAS」と呼ぶほうがいいというわけ。

再び「RQ-1 プレデター」を例に挙げますが、これは単機で運用されることはなく、4機編隊が組まれ、衛星通信サイトと地上基地の55人のスタッフで運用されます。そのようなシステムを構築して初めて役立つという意味では、単一の乗り物というか飛行機械というよりはシステムと言ったほうがふさわしいかもしれません。

ドローン墜落の原因は?

ドローン規制法が早急に成立されたのは、首相官邸という日本の枢要にホビー用といえども気づかぬ間に侵入され、しかも警備職員が気付いたのは墜落してから数日後とみられるということで、その穴だらけの警備を世間にさらされ、メンツを潰された警察がそれを糊塗するために騒ぎ立てたせいではないかと勘ぐりたくもなるもの。

ただ、いわゆるホビードローンの墜落が日本のみならず世界各地で発生したのは確かなことで、この墜落の原因のほとんどは「電池切れ」でした。

ホビー用マルチコプターは、姿勢制御のために常に複数のローターを適切に回転させてバランスをとっています。無風状態ではそれほど頻繁に姿勢制御を行う必要はありませんが、野外で飛ばすことが多いドローンは、大抵風の影響を受けます。風が強く、或いは不規則な吹き方をすればするほど、ドローン本体に内蔵された姿勢制御システムが激しく働くことになり、その分電力を使います。

NHKが行った実験では、風速10メートルになると機体は激しく揺れ、その中で姿勢を保つために急速にバッテリーが消費されて電池切れで墜落。

また、ホビー用はローターを回すモーターの出力に限界があります。バッテリー消費が激しくなるとはいえ風速10メートルぐらいには耐えられるようですが、強い突風には耐えられずに墜落します。

もう一つの原因として、操縦電波への干渉も考えられています。軍用のGPS誘導型RPVは、操縦電波が途切れた時には自動操縦で緊急退避するシステムが組み込まれています。しかし、ホビー用にはそんな高度なシステムはついていません。

そして問題なのは、軍用よりもマスコミなどが空撮に使う小型のドローン。規制法によって気軽に飛ばせなくなったので町中で突然ドローンが落ちてくるという可能性は低くなっています。とはいえ、許可を得て飛ばしているドローンが、上記3つの原因や想定外のその他の原因によって墜落してくるという可能性は否定できません。

ドローンとぶつかった飛行機が落ちる?

私自身はこういうアホなことを言っている人を見たことがないのですが、ドローンが飛行機とぶつかって墜落の原因になると言う人がいるとかいないとか?

そもそも空というのは航空法によって管理されている場所。少なくとも文明国には、空を飛ぶには様々なルールがあります。もちろん世界に冠たる文明国たる日本も同様。レーダーが捉えるようなサイズの航空機であれば、異常な高度を飛んでいればすぐわかります。

そしてレーダーが捉えないような小型のホビードローンは、そもそも旅客機や戦闘機が飛ぶ高度まで飛ぶことができません。航空機にとって恐ろしいのは、ドローンなどよりむしろ鳥との衝突「バードストライク」でしょう。

ドローンによる盗撮の可能性は?

ドローンが広まっている理由の一つは、素人が手軽に空撮できること。姿勢を制御し、安定させられる小型マルチコプターは、ブレのない動画も撮影することができます。そこで心配されるのが盗撮。機種によってはモニターでドローンが撮す映像を見ながら操縦することができますから、そのような心配も杞憂とは言えないはず。

上空からの撮影よりも、人間が地上でスマホやデジカメでやる盗撮のほうが恐いと指摘する専門家もいるようですが、それは的外れではないでしょうか?例えばスマホやデジカメではマンションの3階4階の部屋の中を盗撮するのは難しいけれど、ドローンならばそのハードルは下がります。

マルチコプターのローター音は静音化に向かっていますから、飛んでいてもほとんど気づかれないですね。テレビでよく見るドローンでの空撮にも騒音が入ることはありませんよね?

もちろんドローンの飛行には規制があります。しかし、悪用しようとする人間は規制を守ることよりいかに見つからずに飛ばすかを考えるはず。

テロに利用される心配は?

盗撮などより恐ろしいのがテロ行為に利用されること。首相官邸に落ちていたドローンからは放射性物質が検出されたという報道もありました。犯人がより明確に被害を与えることを考えていたならばもっと大きな被害が与えられていた可能性もあります。

そして、盗撮と同様テロリストも国内の規制法など守るはずがありません。そもそも、ドローン規制法は飛行制限はあっても購入の制限はありません。日本国内でも簡単に購入できます。日本人は根本的に平和ボケなので、自分たちだけはテロとは無関係と思っている者が多いようです。しかし、イスラム系過激テロ組織だけではなく、北朝鮮や中国の破壊工作員がドローンを利用して日本国内でテロ行為を行う可能性は当然あります。

そういう意味ではドローン規制法はザル法と言ってもいいでしょう。

それでもドローンは必要

墜落の危険性、盗撮の危険性、そしてテロに利用される危険性、そういうリスクを考えれば規制もやむなしといったところ。モラリティーが低下している今の日本では、規制がなければあちこちで迷惑行為が行われるかもしれません。

ただ、あまりに規制をしすぎることで国内のドローン技術の進歩が妨げられてはいけないと思います。例えば阿蘇山の噴火後、あるいは箱根が噴火の危険性が高まり通行規制された後、現地の様子を確認するためにドローンが活躍しました。

手元にAEDがないゴルフ場のような場所で、ドローンで即座にAEDを運搬するという研究も行われています。

近年自然災害が増える中、例えば孤立してしまった被災者のところに食料を届けるといったことにも利用されることもあるでしょう。

災害時・緊急時にドローンが有用であることは論を待たないと思います。

結局のところドローンも道具。「いいも悪いもリモコン次第」とは往年の名作『鉄人28号』の主題歌にあった言葉であり、また同作のテーマでもありますが、ドローンもまた、いいも悪いも扱う人間次第なのですね。

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