燃料を節約して最適な高度を維持する長距離巡航

巡航高度に達すると、操縦席では“ほっとした”空気が流れますが、それも束の間。パイロットは次の巡航高度を考え始めます。一般的に飛行機は、高い高度でフライトするほど燃費が良くなる傾向にありますが、国際線のように飛行機が重い場合には、無理して上昇すると重い飛行機を支えるために飛行機の姿勢が悪くなり、かえって燃費が悪くなってしまいます。

このため、飛行機の重さに合った最適高度(燃費がもっとも良くなる高度)を保つ必要があるのです。

例えば、東京からニューヨークまでのボーイングB777-300ERのフライトを例にすると、離陸重量343トンの最適高度は31000フィートですが、そのままの重量で12時間あまりのフライトをする訳ではなく、燃費が消費されることで飛行機は時間の経過とともに軽くなっていきます。

ですから、巡航の初期では燃費の良い高度であったものが、飛行機が軽くなるに従い、燃費が悪い高度になってしまうのです。

そこで国際線のように長距離を巡航する場合には、最適高度を目指して上昇を繰り返すステップアップ巡航と呼ばれる方式で巡航しています。

このステップアップ方式を採用せずに、最初の巡航高度で目的地までフライトした場合、東京~ニューヨーク間では約1.7トンも消費燃料が多くなってしまい、たった1便でドラム缶10本以上、1年間で3650本以上のむだ使いになるのです。

◆近距離巡航に最適な高度の取り方と燃料消費

巡航する距離の短い国内線ではステップアップ巡航の必要はなく、気流や雲などによる高度の変更以外、通常のフライトでは一定の高度で巡航しています。

近距離の場合、積載燃料が少なく飛行機も軽いため、最適高度はかなり高い高度になりますが、羽田空港~伊丹空港のような近距離においては、最適高度での巡航を計画してしまうと、巡航高度に達した途端、降下しなければならなくなるため、最適高度を選択せずに上昇、下降を含めたトータルの燃料が最小になる高度を選択しています。

また、比較的長い距離を飛ぶ羽田空港~福岡空港間では、最適高度で巡航したほうが燃費は良くなりますが、冬場のジェット気流(偏西風の特に速い風速の帯)が強い場合には、いくら最適高度を巡航しても、川上に向かってボートを漕ぐように、前進するために余分なパワーが必要となり、かえって燃費が悪くなってしまいます。

そのため、燃費が悪くなる最適高度以下でも、ジェット気流の影響が少ない低い高度を選択すればフライト時間の短縮となり、全体的にみて燃料が少なくて済むのです。

逆に、福岡空港~羽田空港間のフライトでは追い風となるため、高い高度を選択したほうが、追い風を受けるため黙っていても速度が増して、燃費がさらに良くなります。この追い風の恩恵は国際線のほうが大きく、ホノルルやアメリカ西海岸への路線はジェット気流に乗るような高度やルートを選択して燃料の消費を最小に抑えているのです。

◆もはや机上の空論ではない!?経済的なエコ飛行

航空界では自動車の走行距離にあたるものを航続距離、燃費にあたるものを航続率といい、燃費がもっとも良くなる最適高度と同様に、燃費がもっとも良くなる速度は、消費燃料あたりの航続距離によります。

最大の航続率を保った速度で巡航する方法を最大航続距離巡航方式(MRC:マキシム・レンジ・クルーズ)と呼びますが、この速度は通常のフライトでは遅すぎるため、多少航続率を犠牲にして速度を速めた長距離巡航方式(LRC:ロング・レンジ・クルーズ)があります。

けれども現代では、自動車だけでなく一般的にECO(エコ)が主流であり、航空界も同様のため、ECOではなくECON(イーコン)スピードと呼ばれる、運航に関するあらゆるコストを考慮した速度で巡航する、経済巡航方式(ECONクルーズ)が主流となっています。

運航コストには、整備費用や保険料、着陸料にクルーの給料などを含みますが、飛行時間が長くなればクルーに支払う時間外手当が増えるなど時間と関係するタイムコストと考えられるため、燃料が安価な場合には飛行時間を重要視して速度を早くし、燃料が高騰している場合には航続率を重視する速度にするなど、エアラインが独自に設定しています。

複雑なECONスピードの考え方は机上の話ではなく、飛行管理システムにより、実際の機上でも運用できるようになったのです。

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