航空機事故を防ぐ方法は機材の整備だけではありません

2014年12月28日に乗客乗員あわせて162人を乗せたエアアジア8501便(QZ8501便)がインドネシアで墜落しました。同便はインドネシアからシンガポールへ向かう途中で突然消息を絶ち、その後の捜査でジャワ海に墜落したことが判明したものです。

QZ8501便の機長は53歳、元空軍パイロットで飛行時間2万時間を超えるベテランパイロット、副操縦士はフランス国籍で2,000時間超の飛行を経験していました。

航空機事故の原因としてあげられるのは、機材や計器の故障、人的ミス、悪天候の3つが主なものといわれています。

QZ8501便は高度9,800メートルを巡航中に進路を左へ変更し、その60秒後には約1万1,600メートルにまで急上昇しました。

オートパイロット(自動操縦)であれば通常はその3分の1以下とされていますので、60秒での約1,800メートルは異常な上昇とも見られ、上昇気流に巻き込まれた可能性も高いと言われています。

急激な高度上昇後には“失速”が起きる可能性が非常に高くなります。翼を流れる空気の乱れが失速を引き起こし、機体は重力に勝てずに落下、こうなるとエンジンは無力となり機体の制御は困難を極めます。

また高度と速度には関連があるため、高度を上げていくと飛行可能な最低速度と最高速度の数値が近づいていくことになるそうです。

QZ8501便のように、高所を飛行する際は最低速度と最高速度の差が縮まり、“コフィン・コーナー”と呼ばれる飛行可能な範囲を外れると失速は免れなくなってしまうのです。

しかし、失速時の対応はシミュレーターなどで充分に訓練される内容であり、当該便の機長はベテランであり失速からの回復は充分可能な技術があったと推察されますので、更なる外的要因により操縦不可能となる事態が発生したとも考えられます。

QZ8501便と同じような事故事例として、2009年6月1日に発生したエールフランス447便(AF447)の墜落事故があり、この事故原因は計器の故障と結論付けられています。

乗客乗員約230人が搭乗したAF447便は、リオデジャネイロを出発してレーダーから消失しました。

AF447便は熱帯収束帯で悪天候に遭遇し、機体表面に設置されている対気速度を測定するピトー管と呼ばれる装置が凍結、コンピューターがシャットダウンしたためオートパイロットが使用できなくなりました。

パイロットによるマニュアル操縦での高所飛行を余儀なくされ、実際は速度超過していなかったものの誤認により減速したために失速、沈むように落下したとされています。

このAF337便の事故は、QZ8501便と共通点が多いと指摘されています。

QZ8501便が墜落した当日の気象衛星データによると、上空は嵐で雲が多く、最低気温はおよそ零下80度となっています。ピトー管を温めるヒーターが故障したと仮定すると、ピトー管が凍結してこの状態に陥ったことも十分考えられます。

落下中に空中で爆発したという一部報道もありましたが、ジャワ海で発見された残骸の位置を基に専門家が分析したところ、胴体の後部が最初に海面に激突した形跡があり、ボイスレコーダーの音声にもパイロットが最後まで墜落の回避を試みようとする一部始終が記録されていたことから、その可能性は低いとされています。

QZ8501便で使用されていたのはエアバスA320、最新技術を搭載した単通路型のエアバスのベストセラー機の自動操縦システムは計7台のコンピューターで構成されています。

航空機自体は自動車よりも安全と言われるほどに進化していますが、操縦が高度に自動化されているからこそパイロットに複雑なシステムの習熟が求められる側面もあり、緊急事態発生時のマニュアルでの操作訓練はさらに重要となってきます。

実際に航空事故の約8割は予測不可能な要素が原因ですが、その1つが人的ミスとされているのです。

QZ8501便が赤道に近づく頃、ジャワ海上空の天候が悪化したため、管制官に左への進路変更と上昇の許可を求めていましたが、周辺空域の混雑により管制官はその要請を拒否しました。

他機は違う高度を飛行中で約9,800メートルにいたのは同便だけだったことから、パイロットは巨大な嵐を前に進路を変更すべきか否かの選択を迫られたと考えられます。

結果、QZ8501便は進路を左に変更しましたが、その後に急上昇した理由はいまだ解明されていません。

過去50年の間に発生した死亡者を含む航空機事故には、悪天候に起因するものが多くあります。今後も気候変動や地球温暖化が進めば、嵐が起こりやすくなり、その危険性が更に増すと指摘する専門家もいます。

悪天候を完璧に回避するテクノロジーは今のところ存在しません。

しかしながら、紫外線レーザーを照射して前方にある水滴の散乱光を測定する探知装置の実用化に向けて研究が重ねられているところです。

レーダーによる飛行監視システムには穴があり、航空機と管制官の位置情報の交信では間隔が10分以上開くこともあるため、エアリオン社が衛星と連動するシステムを2018年より運用を開始する予定です。

地球全体をカバーする衛星が航空機からの位置情報を受信して管制官に送信するGPSのようなシステムで、飛行中の位置をリアルタイムで把握することが可能となります。

これにより、管制官が航空機から高度変更の要請を受けた場合も迅速な対応が可能となり、QZ8501便のような事故を未然に防ぐことにつながるといわれています。

航空機事故が起こらないようにするには、整備やパイロットの質向上などの航空会社の自助努力の他、天候予測のシステムや航空管制のシステム革新など、まだまだ多角的に取り組める内容がありそうです。

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