旅客機の自動操縦装置はどこまで信頼できるものなのか

飛行機もいまや「オートマチック」の時代です。離陸直後の上昇、巡航、降下、着陸まで自動操縦でまかなえる旅客機もめずらしくなくなりました。それなら、離着陸時やトラブルが発生したとき以外の「安定飛行中」はパイロットも息抜きしているのではないか・・・と思ったら、それは大間違い。

飛行中は、たとえそれが「安定飛行」であっても、計器類の監視、地上管制官との情報交換を怠ってはなりません。いまの天気は良好でも5分後には大きな積乱雲が現われるかもしれないですし、目視やレーダーで確認できない乱気流に巻きこまれるかもしれません。入念な整備を行ない、万全を期しているはずの旅客機のどこかに不具合が生じる可能性もゼロではありません。

たしかに、「操縦」は「自動」にまかせているかもしれませんが、フライトの状況を監視するのは人間の目にほかなりません。

そして、この「監視」という作業は、片時も目が離せないという意味で、意外と大変なのです。特にトラブルもないのに、緊張感をもって集中力を保ちつづけなければならないからです。

機長・副操縦士の1組が連続して集中力を維持できる時間は、9時間くらいが限度とみられています。そのため、現在は、これを超える長時間のフラィトでは、乗務員を1.5~2組に増やし、交代でカバーする形がとられるのが普通です。ところで、現代の「自動操縦装置」はどこまで信頼がおけるのでしょうか。

1994年4月26日、名古屋空港に着陸しようとした中華航空のエアバス「A-300」型機が墜落し、乗員乗客264人が死亡する事故が起きました。同機が着陸態勢に入り、高度330mまで降下したところで、誤って「着陸やり直しのための上昇」を指示する自動操縦が働いてしまい機首が上向いたため、パニックを起こした機長と副操縦士は機首を下げようと操縦桿を倒しました。その結果、自動操縦システムと操縦桿の動きが対立し、失速墜落してしまうという経緯をたどったのです。

この事故後、「コンピュータの判断」と「人間の判断」のどちらを信頼すべきかという議論が巻き起こりました。ボーイング機は「最終的には人間の判断が優位」、一方、この事故を起こしたエアバス機は「緊迫した状況では人間よりもコンピュータを信頼すべし」というコンセプトのもとにつくられています。

エアバス機では、最後までパイロットとコンピュータが「喧嘩」をつづけたのに対し、ボーイング社の航空機はパイロットが操縦レバーを引くと、自動操縦装置が簡単に解除されてしまうしくみになっています。最後の判断を「人」にゆだねるのか、それとも「コンピュータ」にゆだねるのか。正解はまだ出ていません。

自動操縦の役割には主に次にあげる3つがあります。①突風など機外からの影響に対し、機体の姿勢を調整し、安定させる。②あらかじめ設定した方向に、機体を飛行させる。③機体を上昇、下降、旋回させる。これだけのことがパイロットの操縦なしでできるのですから、大したものです。そして、自動操縦が働いているあいだは、パイロットはこれのサポート役に徹するわけです。

自動操縦を支えているコンピュータ(フライト・コントロール・コンピュータ)は、旅客機1機につき3台も搭載されています。もし、何かのトラブルで、どれかのコンピュータに故障が起きてもフライトがつづけられるようにするためです。そして、3台のコンピュータは常にそれぞれの計算結果を比較し、数値が一致しているかどうかを確認し合っています。もしも、1台に誤りが起こったら、そのコンピュータは自動的に切り離されるしくみです。

これに加え、離陸や着陸に関する自動操縦システムを備えた旅客機もあります。好天時の着陸は「自動」で行なわれるケースも多くなりました。

こうして、パイロットは自動操縦装置のサポート役、あるいは、いざというときの待機人員となりつつあります。それでもなお、全フライトをコンピュータにまかせ、パイロットが搭乗しなくてすむ旅客機が登場するか、との問いに「YES」と答える航空関係者はなかなかいません。戦時の偵察機などには、すでに「無人航空機」が使われていますが、乗客をのせる旅客機ではやはり無理なのでしょうか。

無人航空機を製造するメーカーのなかには、その技術を駆使すれば、将来的に民間旅客機にパイロットをのせる必要はなくなるかもしれないと考えているところもあるようです。しかし、「人よりもコンピュータ優位」を唱えるエアバス社でさえ、「パイロットの乗っていない旅客機」など想像できないという見解を示しています。「今後、いくら自動操縦の技術が向上したとしても、その対応能力には限界があるが、パイロット(人)なら無限に変化する状況にも対応できる」と。

ならば、「コンピュータよりも人優位」を唱えるボーイング社は「無人操縦旅客機」の可能性をもっと強く否定するだろう、と思いきや、「将来の定期旅客機に無人航空機の技術が導入される可能性はゼロではない」と、意外な答えが返ってきました。「その技術を今後も評価しつづけ、もし導入することがふさわしいと判断すれば採用の可能性はある」そうです。「合理性」を重んじるアメリカ人らしい回答といえるでしょう。

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