「航空会社」は、安全を最優先できるようにできています

航空機は「世界で最も安全な乗り物」です。これまでの統計と、乗り物の歴史がそれを証明しています。

とはいえ、航空機事故のニュースは、見かけるたびに気にかかるものです。

こういうこと、事故の確率が少ないかどうかの問題ではない。

これについて、日本の航空評論家がコメントしました。

最近の航空会社の低価格競争は行き過ぎです。利益ばかり追求して、もっとも重視すべき運航の安全性を忘れているように感じられます。

台湾で7月に起きたトランスアジア航空の墜落は、象徴的な事例だと思います。墜落事故が起きたとき、台湾では台風の影響で強い雨が降っていました。暴風圏すれすれの雷雨の中では、着陸中止が鉄則です。

それなのに、予定通り着陸できなかったら乗客からクレームが来るし、補償問題になってお金がかかったりしたらイヤだ。だからなんとか着陸しろ、と強行着陸することになった。その結果があの大事故です。

実は航空会社は、クレームや補償問題や、お金がかかることなんて、心配しなくても良かったのです。航空会社はそういう仕組みになっているからです。

航空会社は「租税特別措置法」で保護されています。まったく利益なしの経営、つまり「経常収支ゼロ」でも、やっていけるようになっているのです。これは航空会社が「経常収支ゼロでも、公共交通機関という社会的使命を果たせるようにするための」特別な措置です。

「経常収支ゼロでもやっていける会社」ということは、「もうけを追求しなくてもいい会社」だということ。その分「安全だけを追求し、安全だけを最優先する会社組織を作ることが可能」なのです。そのための租税特別措置法ですから。

なのに、今回の事故を起こした会社は、お金のことや、もうけのことばかり気にしていた。航空機の運航業務で最も重要なこと、「危険回避のために必ずやらなければならないこと」をおろそかにした。その結果、大きな事故を起こして、お金で補償したくらいでは取り返しのつかない事態を引き起こしてしまったのです。

日本の航空評論家だけではありません。国際的に「航空会社はコストばかり気にして、空の安全を放棄している」という危機感が拡がっているそうです。「アジアのLCCには事故が起きても報道しない会社がある。メディアが事故を取り上げない国もあるし、事故調査すらしない国もある」という事例が伝えられたからです。

他に、日本政府に「国内外からもっと多くのLCCを参入させて、空港利用率を上げよう」という動きがあります。でも、新たに参入するLCCが、きちんと空の安全について考えている会社かどうか、見極める手段はありません。航空事故が起きても報道しない、事故の調査もしないような会社や国では、安全性への意識がちゃんとしているかどうかを調べようがないからです。

その上「もっとLCCが参入しやすいように、日本の航空法の規制を緩めてしまおう」という動きがあるそうです。航空機を利用すれば高い利益をあげられるはずだ、空港に来る人が増えれば儲かるはずだと考え、夢中になりすぎているのかもしれません。

こういうことを思いつく人は「航空法を緩めると、飛行機のメカニズムがどうなるか」を知らない人です。

「日本のLCCをもっと増やしたいと考えている人たち」イコール「飛行機や空港のしくみに詳しい人」ではないのです。「航空機を利用すれば高い利益をあげられるはずだ、空港に来る人が増えれば儲かるはずだと考え、期待している人」と、「航空機が好きで航空機に詳しい人」は、まったく別のことなのです。

たとえば「飛行間整備」

航空機が空港に着陸したらそこで必ず整備をするという「飛行間整備」が、航空法で義務づけられています。ところが、2年前から毎回整備をしなくてもいいことになったそうです。航空機のメカに詳しい人は、これがどのくらい怖いことなのか、よくご存じだと思います。

航空機に関わる法律を決めたり変更したりする人が、航空機のメカに詳しい人とは限りません。

「そういう変更をしたら飛行機がどうなるか」を知らないので、というより、「それをやったら飛行機がどうなるかを知らないから」こういう決定ができるのです。

仕事をしていて「知識なしに担当に回される」のは、社会全体、よくあることです。法律を変更するという仕事においても、その点では同じ。

専門用語なし、子どもでも誰にでも判りやすい説明というのがあります。本当にメカに詳しい方には、それができます。なぜ航空法のそのポイントを変更したらまずいのか、場合によっては伝えることも必要なようです。ラッキーなことに、今はインターネットのホームページでもなんでも、多くの窓口が開設されて、伝える手段が増えています。

航空法の成立当時と今とでは、時代と状況が違うため、きちんと伝えれば伝わります。

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