旅客機の飛行ルートは毎日のように変わる!?

ひとくちに「東京ーバンコク間」といっても、航空路は1つではありません。いくつかあるルートのうち、フライト当日の出発地や目的地の天候のほか、航路上の風の流れなどをもとに、最適なコースが決められます。フライトの前に、機長が運航管理者と飛行計画について話し合い、気象状況を確認したうえで、最も飛行時間が短くてすむ経路を選ぶのです。こうして選択されたルートを「ミニマム・タイム・トラック」(MTT)といいます。

日本発着のフライトの場合は、上空のジェット気流(偏西風)の影響を受けやすく、これを十分考慮したうえでミニマム・タイム・トラックを設定しなければなりません。特に冬になるとジェット気流は強まるため、季節ごとに選択されやすいルートは異なってきます。

たとえば、太平洋上空を飛行するフライト(主に東京-ハワイおよびアメリカ西海岸間)では、ルート設定は毎日のように変わります。東京からロサンゼルスに向けて飛行する場合などは、アラスカ付近を通ることもあれば、もっと南の太平洋上を飛ぶこともあり、ルートどうしが300~400kmも離れていることもめずらしくありません。

また、飛行中も、地上の管制官と常に情報をやりとりしながら、必要に応じて高度を上げたり下げたり、条件のよいルートをとるようにしなければなりません。空の天気は刻一刻と変わっていますし、飛行ルートによっては、1つの航空機の5分前にも5分後にも、また頭上にも眼下にも別の航空機が飛んでいるという混雑しているところもあるからです。

パイロットの横には、いつも空の地図「航空路チャート」が広げられています。世界のほとんどの航空会社で採用されている航空路図が、アメリカのジェプソン社発行のルート・マニュアルです。ここには、航空路の名称や目的地、ルートの途中にある地上無線局の種類や周波数などが細かく記されています。別のぺージには、目的空港の出発や着陸の方法、各空港の注意事項などが詳細に書かれています。

乗員乗客269人をのせた、アメリカ・アンカレッジ出発の大韓航空機(ボーイング747)が、サハリン上空で旧ソ連軍機に撃墜された事故を覚えておられるでしょうか。このとき、大韓航空機は「R-20」と呼ばれる「空の道」を通って韓国ソウルへとたどり着くはずでした。しかし、実際には正規ルートの北西600~700kmも外れたコースを1時間半にもわたって飛んでいました。なぜ、飛行ルートを大きく逸脱したまま飛びつづけたのか、地上の管制官から警告を送る手段がなかったのか、多くは謎のままです。定められた飛行ルートを外れるとどんな危険が起こるかということを、この事故が切実に物語っているといえるでしょう。

飛行ルートはフライトごとに変わります(設定し直します)が、障害物がないからといって、空中を縦横無尽に飛んでいいわけではありません。たしかに、空には地上のような道路は見えませんが、空の「ルートマップ」は存在します。そして、地図に描かれたいくつかの「空の道」のうち、気象条件や他機のフライトの状況を勘案して最適なコースづくりをするのです。

たとえば、日本上空の航空路には、「G」(ゴルフ)、「R」(ロメオ)「A」(アルファ)、「B」(ブラボー)、「W」(ウイスキー)などの種類があり、それぞれ、「R-11」「A-7」というように、空路番号がつけられています。

前述の「R-20」はアンカレッジ(アメリカ)からソウル(韓国)へとつながる道ですが、東京(成田)から、新潟上空を経てハバロフスク(ロシア)につながる道は「R-11」と呼ばれています。成田発パリ行きの旅客機の場合、成田からハバロフスクまでは「R-11」を利用し、そのあと「R-22」に乗り換えて、さらの「R-30」「R-1」「UR-1」「UB-31」を通ってパリに到着するという道筋です。

そして、航空路の途中には、別の航空路に乗り換えられる地点(ウェイポイント)が設置されています。高速道路でいえば「インターチェンジ」のような場所です。ウェイポイントは5文字の英文字で名づけられています。たとえば、長崎ー上海間を結ぶ、「A-593」というルートには、「LAMEN」「ONIKU」などの名前があり、見ているだけで(といっても文字が書かれた標識があるわけではないのですが)、お腹が空きそうになります。

このほか、世界で見ると「PIANO」「ORGAN」「VIOLA」「CELLO」「FLUTE」などの楽器の名称や、「CAVIA」「GOBOH」などの食べ物の名前、「MICKY」「MAMAS」などの固有名詞もあります。

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