旅客機の乗務員は、なぜ機内のコーヒーやお茶を飲まないのか

「旅客機の乗務員は、なぜ機内のコーヒーやお茶を飲まないのか」

そういう変わったタイトルの本が出版され、アメリカで話題になっています。

旅客機内の水は汚いので、乗務員たちは決して飲まない。自分たちのコーヒーは機外から持ち込む。

本にはそのように書かれていたので、大問題となったのです。

この本を書いたジョン・ゴグリアは、ベテランの航空整備士です。キャリアは30年以上、米国国立輸送安全委員会の役員も務めていますし、大学の非常勤講師として航空学を教えてもいます。

本によれば、アメリカの環境保護庁が、機内の水の衛生状態を調査し始めたのは2004年。調査対象となったアメリカ国内の旅客機の内、10機に1機の割合で、水から大腸菌群が発見されたそうです。

大腸菌群そのものは体に害を及ぼす可能性は低いのですが、大腸菌群が水に入らないよう管理するのは、それほど難しいことではありません。大腸菌群が紛れ込むような環境に置かれた容器の水には、より危険なバクテリアが混入している可能性があるのです。

著者は、自分自身の体験についても書いています。

著者がUSAirに勤めていた30年前、給水タンクは定期的に消毒され、残水を排水しているのも見かけたそうです。しかし、消毒したというものの、タンク内やホースには汚れがたまっていて、タンクの水から作られた飲料を飲む気にはならなかったというのです。タンクだけではなく、タンクに水を給水するホースのノズル部分にも、異物が見つかったケースがあったそうです。

この本の記述が事実なのか、ある航空会社の客室乗務員に聞いてみました。

「すべての航空会社がそうであるかどうかは知らないが」と前置きした上で、その客室乗務員は「自分は絶対に飲まないことにしている」としました。

理由は「いつタンクを清掃しているかわからないから」。

それに、タンク内の消毒に使う塩素が強すぎるのか、おしぼりを作るなど、ちょっと水仕事をしただけで手が荒れてしまうので、その水を飲む気にはならないとのこと。

しかし、旅客機の水による健康被害は、これまで一度も聞いたことがないそうです。

ですが念のため、機内で出される水やコーヒーなどは、どんな場所で作られたものなのか、気をつけたほうかよさそうです。旅客機に乗るときは、ペットボトルなどの安全な水や、自分で沸かしたお湯を水筒などで持参すると、より衛生的でしょう。

トイレなどで使われている他の水も、管理状況は似たようなものと考えられます。赤ちゃんのおむつ替えのときや、大人もトイレで手を洗うときは気をつけたいものです。

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