航空機が安全に世界の空を飛び回れる理由と機械による管制の限界

航空機が安全に飛行するためには、飛行する空域の状態を知り、自分自身の飛行速度や高度、針路などを正しく把握する必要があります。こういった情報を把握して航空機を誘導するのが、航空管制官の仕事。

航空管制官とは担当する空域を飛行している航空機の情報を読み取りながら、衝突事故を回避するための交通整理を行う重要な仕事で、航空管制官には高度な空間認識能力と情報処理能力が要求されます。

というのも、各航空機から無線で送られてくる位置報告(ポジションレポート)は経度や緯度などの数値、もしくはあらかじめ設定してあるポジションの名前で送られてくるので、それらの情報をもとに管制官は自分の頭の中に広い航空図を描かなくてならないからです。

しかもそれは単純な二次元の平面図ではありません。

航空機はそれぞれが異なる高度で飛行をするため、航空管制官は三次元の広がりで航空図を認識しなくてはならず、航空機の数が少ないのであればともかく、多くの航空機が飛び交う現状ではとてもではありませんが、人間に頼っていては処理が追い付きません。

これを補うために開発されたのが対空監視用のレーダー。

現在では各地に航空管制用のレーダーが設置され、世界中の航空機がレーダーによる管制を受けています。レーダーはレーダー・スコープをのぞくだけで空域のどこに航空機がいるのか、どこに向かおうとしているのかを一目瞭然に地図上で見ることができるの便利な機械。

レーダーから発射された電波が物体に当たり、戻ってくる反射波を測定することにより物体の位置を把握し、反射波の向きから物体のいる方位を知り、発信から反射波受信までの時間差から距離を算出するだけでなく、連続的な探知により、物体の針路や飛行速度をも知ることができるのです。

ただし、レーダーもまた人間と同様に万能ではありません。

レーダーが受信した反射波の全てをレーダー・スコープに表示していくと、雨雲などの航空機以外の物体の反射波が入りまじり、画面は何が何だかわからない状態になってしまいます。

そこでレーダーとコンピュータを連携させて不要なノイズを払い落とし、本物の航空機だけを輝点(グリップ)として映し出す必要があるのです。これらのレーダーは一次レーダーと呼ばれますが、航空機の識別をするだけの機能は持ち合わせてはいません。

そこで必要になってくるのが二次レーダー。二次レーダーの役割は、電波を発射することで対象物がどんな航空機であるかを識別すること。

あらかじめ航空機ごとに特定のコードをセットしておいたトランスポンダーを搭載することが必要ですが、地上に設置したインテロゲーターから発射した電波を受信したトランスポンダーからの応答と読み取ることで、その空域を飛行している航空機がどんな国や会社に所属する航空機であるのかを識別することが可能となります。

この二次レーダーは軍用機では敵味方識別装置、すなわちIFF(Identify Friend or Foe)と呼ばれます。正しい応答を返してこない、もしくは応答自体を返さない航空機は正体不明機。

つまり敵機と判断することができるので、軍用機においては敵味方の区別を明らかにして誤射や同士撃ちを回避するために必要不可欠な装置であることはいうまでもないでしょう。

一次レーダーで航空機の緯度や経度、高度や針路を把握し、二次レーダーで航空機の識別を行う。この二つを組み合わせることで、現在多くの航空機が事故を起こさずに、安全に世界中の空を飛び交うことができるのです。

しかしながら、航空機が飛行中に消息不明となる事故はいまだに後を絶ちません。一次レーダーと二次レーダーの無敵の組み合わせで管制を行っている現代において、なぜこのような事故が発生するのでしょうか。

実はレーダーによるシステムは完全に航空機の管制をすることができていないのです。というのも、電波が直進するのに対して、肝心の地球が丸いため。陸上に設置した複数のレーダーを組み合わせても、広い洋上の空域をカバーすることは難しいことなのです。

これら機械の欠点を補完するためには、皮肉にも人間の力、つまりパイロットによるポジション・レポートに頼らざるをえません。技術が進歩した結果、慣性航法装置(INS : Inertial Navigation System)やGPS(Global Positioning System)などの衛星航法システムによる高精度の測位が可能になったことから、ポジション・レポートの信頼性は格段に上がっています。

機械の緻密さと人間の柔軟さ、レーダーとポジション・レポートの組み合わせは、より安全な航空機の管制体制を樹立させるためには必要不可欠なファクターであるといえます。

しかし、人間の力は時としていい加減で、重大なミスを犯してしまいがちなもの。洋上飛行中のパイロットがポジション・レポートを報告しなければ、その飛行機を見失ってしまうリスクが高くなるわけですから、人間のミスを防ぎ、その問題を解決するための技術開発が現在も進められています。

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