中東諸国の空港や航空会社が世界を席捲する日も近い!?

航空業界において、中東諸国の空港や航空会社が飛ぶ鳥を落とす勢いで勢力を増しています。2014年にはUAEのドバイ国際空港の国際線旅客数が7,000万人となり、これまでトップであったロンドンのヒースロー空港を抜き、初めて首位に躍り出ました。

これまで国際線旅客数最多であったヒースロー空港の空港容量はすでにフル稼働している状態で、それ以上の需要増に対応することができませんでした。空港側は滑走路の拡張を政府に申請していますが、認可が下りたとしても完成は2023年以降になるものと想定されています。

一方でドバイ国際空港は今年7,900人の利用客を見込んでいるとのことです。

イスラム国などの活動により中東・アフリカ地域での観光需要には陰りがあるものの、ヨーロッパやアジア、アフリカなどの主要都市を8時間以内で結ぶことのできる地の利を生かして世界の空港の中心になるべく、今年も首位を死守する勢いです。

ドバイ国際空港がここまで急激に発展を遂げたのは、国家を挙げた戦略が後ろ盾になっているとのことです。

国営の航空会社であるエミレーツ航空の路線拡張、空港設備充実への投資、オープンスカイ政策などの他、機体重量1トンあたり14.9ディルハム(約480円)という激安な着陸料も経由地として利用しやすい条件となっており、140を超える航空会社がドバイ国際空港に集まっています。

さらに将来的には、新空港と合わせて利用客年3億人の巨大空港となることを視野にインフラの整備を継続中。

ドバイに拠点をおくエミレーツ航空の超大型機のエアバスA380や大型機のボーイングB777の保有数は、世界第1位となっています。2014年3月期の搭乗率は79%にとどまっていますが、輸送能力は桁外れで、世界中の旅客が集まっていることに疑いの余地はありません。

このエミレーツ航空の発展と政府の国家的な戦略により、ドバイ国際空港は旅客数首位に躍り出ることができたのです。

そして、ドバイに続いてカタールやドバイと同じUAEのアブダビも、これに続こうと勢力を増しています。IATA(国際航空運送協会)の統計によると、2014年の中東の国際線交通量(利用者数×飛行距離)は前年比113%となっていて、他の地域を圧倒する勢いとなっています。

カタール航空は今年1月にイギリスのブリティッシュ・エアウェイズをグループ傘下にもつIAG(インターナショナル・エアラインズ・グループ)の株の約1割を取得し、同グループの筆頭株主の座をつかみました。

カタール航空のアクバル・アルバーキルCEOは「IAGは当社の西方戦略に重要な機会を提供してくれる」と語っていますが、どういう意味なのでしょうか?

ロンドン発着の北米路線、特にニューヨークなどの主要都市を結ぶ路線はドル箱とされていて、ヨーロッパや北米の大手航空会社がほぼ独占して運航している状況。そこで、カタール政府はIAGの筆頭株主になることによりロンドン・ヒースロー株の2割を持つことで、北米まで一気に狙いを定めたことになります。

そして、同社は今後も更なる株式取得を目指し、その影響力を拡大していこうとしています。

また、UAEのアブダビに拠点をおくエティハド航空はイタリアのアリタリア航空やドイツのエア・ベルリンに出資していて、こちらもヨーロッパおよび北米進出の機会を狙うと共に、さらにヨーロッパでの勢力拡大の機会を探っているといわれています。

このような中東諸国の勢いにより、他地域の既存航空会社も大きな影響を受けています。

ヨーロッパの代表的な航空会社であるルフトハンザやエールフランスなどの業績は悪化。ヨーロッパの大手エアラインは傘下のLCCなどに路線を移管するなどして経営の立て直しを目指しています。

しかしながら、乗務員のストライキが頻発するなど経営にとって不安定な要素もあり、2014年のドイツのフランクフルト空港およびフランスのシャルル・ド・ゴール空港の発着数は減少を余儀なくされました。

アジアでは、シンガポールがUAEとオープンスカイ協定を結び、更なる航空網展開を目指していましたが、逆にエミレーツの攻勢を受けることとなり、シンガポール航空はアジア―ヨーロッパ路線の旅客を奪われる形となってしまいました。

日本のANA・JALも他人事ではなく、アジアと北米の旅客取り込みを狙う両者にとって、航続距離が変わらない中東経由便は大きな壁になりそうです。

世界的な航空業界の再編でも中東勢が主導権を握り始めました。

アジア・欧州路線で圧倒的な地位を確立し、今後はオープンスカイを武器に更に勢力を強める勢いで、現状の勢力図が大きく変わりつつあります。

2020年オリンピックを控える日本にとって、実用的なオープンスカイ構想などで迅速な対応を行い、外資系航空会社を含めた航空網の展開を考える時期にあるようです。

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