航空機へのレーザー照射防止策はあるのか

航空機が着陸しようとした際に地上からレーザー光が当てられるという事件が日本国内でも相次ぎ、ニュースで報じられています。

一歩間違えば大惨事にもなりかねない行為ですが、今のところ基準を超える製品の使用を規制する仕組みはなく、敷地外からの照射の取り締まりや発見も難しい実態です。

2015年10月大阪国際(伊丹)空港南東の上空にて、着陸態勢に入り高度約300メートルまで降下した全日空機の操縦席の窓に強い光が当たるという事例が発生しています。

進行方向の地上付近から何者かがレーザーポインターを照射したとみられ、国内販売を禁じられている強力なレーザーポインターが使われた可能性が高いとされています。

国内の他の空港でも同じような事例は相次いでいますが、今のところ大きな被害は出ていません。

しかしながら、航空評論家の小林宏之さんは、「操縦士の集中力がそがれる恐れがある。乱気流や計器異常など緊張を強いる場面と照射が重なれば、惨事につながる可能性はある」と指摘しています。

レーザーポインターとは、ペン型やマウス型の機器で、内蔵された半導体などからレーザー光を出して照射するものです。

レーザーは緑や赤など特定の色で直進し、主にスクリーンを指し示すなど事務用品として使われています。

国では2001年から消費生活用製品安全法に基づく規制を導入し、「消費者に危害が及ぶ恐れ」のある特定製品に指定し、出力1ミリワット未満といった基準を超える製品の販売を禁じ、違反した業者には懲役1年以下などの罰則が科されることとなっています。

同法によれば光の強さに応じてクラス1〜4の4段階に分類しており、販売可能なのは目に光が入ってもほぼ影響がないとされるクラス2までとされています。

国内メーカーなどによると、基準内のレーザー光の到達距離は最長200メートル程度とされています。

伊丹空港のケースでは、少なくとも約300メートル先の航空機にまで達していたことから、クラス3以上だった可能性が高いものとみられています。

中央大学でレーザー光学を専門としている庄司一郎教授は、「基準を大きく超える出力の製品で、海外から運び込まれた可能性が高い」と推測しています。

海外業者が運営する通信販売サイトでは、強力なレーザー光を出す製品が紹介されている実態もあります。

レーザーの安全性について研究する橋新裕一近畿大学教授が一部の中国製品を調べたところ、基準の100倍超に相当する出力があったといい、近距離で目に入れば網膜への損傷が避けられないレベルのものだといいます。

しかしながら、消費生活用製品安全法では、基準を超える製品の購入や所持、使用を規制対象としていないことから、橋新教授は「テロ行為への悪用も懸念され、所持そのものに網をかける法整備を急ぐべきだ」と指摘しています。

伊丹空港の事件について、大阪府警では捜査を進めているものの、照射した人物の特定は難航が予想されています。

全日空機が照射を受けたのは、空港から4〜5キロ離れたところで、照射した人物がいた可能性の高いエリアは数キロ四方にも及ぶからです。

国土交通省は空港への侵入防止や機内持ち込み検査といった保安対策を強化していますが、担当者も「空港外の行為には管轄が及ばず、打つ手がない」と話しており、空の安全確保をめぐる新たな課題となっています。

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