機内でのウイルス感染防止に一役買うシステムを高校生が発明

飛行機は多くの人を乗せ、長距離でも移動ができるという本当に便利な乗り物。

しかしながら、飛行中の客室内は閉鎖された空間であるため、仮に伝染病などを患ってる方が搭乗している場合には、二次感染する可能性が地上よりも高くなってしまうことは明らか。

実際に、ノロウイルスなど流行する冬の時期には、感染している意識のない乗客の吐瀉物などでまわりの乗客や客室乗務員が感染するという例は毎年少なからず報告されていて、特に寒くなる時期の機内の消毒対策については各社細心の注意を払っているところです。

ただし、この問題に対しては消毒などの人的な対策以外には主だった対策がないというのが現状ですが、最近、既存のキャビン換気システムを改良して細菌感染を防止する装置が発明されたとのこと。

さらに驚くべきは、この装置の発明者はなんと17歳の高校生。

このシステムを発明したのは、カナダ在住の高校生レイモンド・ワンさん。

半導体メーカーのIntelが開催した高校生向け科学コンテスト「インテル国際学生科学フェア」でワンさんのこの発明が第1位を獲得、賞金7万5,000ドル、日本円で約900万円を手にしたとのこと。

そもそも既存の機内の空調システムは、座席上部から送り込まれた空気がキャビンの中央で渦を巻いて滞留する仕組みになっていて、この空気もいずれは床に設置された排気口から吸い出されて機外へ排出されるのですが、仮に感染者の持つ病原体がこの空気の流れに乗ってしまうと、渦によって周辺の乗客へと拡散されてしまうリスクが存在しているとのこと。

今回ワンさんが考案した空調システムは「空気のカーテン」を利用して従来の客室内の気流とは全く異なる流れを生み出すことにより、病原体の飛沫を防ぐというもの。

乗客の間を遮るように空気を吹き付けることで空気のカーテンを疑似的に作りだし、周囲の乗客からの病原体を効率的にシャットアウトするように空気の流れがデザインされています。

この発明は、2014年に西アフリカで大流行して世界的問題にもなった「エボラ出血熱」をきっかけに生まれたとのこと。

エボラ出血熱は血液や体液などを感染源としているため、このウイルス単体では空気感染のリスクは非常に低いとされていますが、インフルエンザやSARS(サーズ)などの病原体を持つ乗客が飛行機に搭乗していると、感染拡大の危険性が一気に増大すると言われています。

これに関心を持ったワンさんが航空機に備わっている換気システムについて調べた結果、既存の航空機メーカーでは病原体の空気感染を防止するような対策を盛り込んでいないことがわかりました。

ワンさんいわく、「従来のキャビンには、2つの大きな空気の渦が前後方向を軸にして渦巻いており、病原体がバラ撒かれている状態」とのこと。

そこで考案したのが、機内を乗客ごとに強制的に仕切るエアカーテンを作り出すことで「パーソナル・ベンチレーション・ゾーン(個別通気ゾーン)」と名付けられた空間を作り出し、病原体が別の乗客に達することを防ぐ仕組みとなっています。

このシステムにより、各座席に届く新鮮な空気の量が最大で190%増加、病原体の飛散リスクを55分の1に減少させることが可能になるとのこと。

また、このシステムの特筆すべき特徴のひとつとして、導入のしやすさがあります。

既存のキャビン空調システムに簡単な部品を追加するだけですぐに導入できるとのことで、ワンさんの試算によれば1機あたりの導入コストはわずか1,000ドル(12万円)という非常に安価なものといいます。

ただし、航空機の部品については部品代だけでなく、改修に関する様々な手続きとその費用が加算されるため、単純な金額で済みそうにはありません。

ところで、ワンさんはこの空調システム以外にもこれまでに発明をしているものがあるそうです。

屋根に当たる雨によるエネルギーを利用した発電システムや、自己クリーニング機能を搭載した屋外用ゴミ箱などを開発してきたとのことで、発明することについて、「アイデアを思いつくことがまず大事なことですが、もう一つ大事なことは、そのアイデアをいかに世の中に知らしめるかということです」と述べています。

今回ワンさんはこの発明で見事にコンテストの第一位を獲得し、この発明についてはすでに特許を出願しているそうで、名実ともに世の中に知らしめることができたことになります。

また、既に自身の会社「RayCorp」を起業していることが自身のプロフィールページ「about.me」で触れられています。

アイデアを思いつく能力、さらにそれを形にし、実用に向けて動かす力をまさに備えているといえそうです。

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