あの会社もこの会社も、超音速旅客機が目標!

「コンコルド」のラストフライトから、早くも11年が経ちました。

コンコルドは、イギリスとフランスが共同開発した、超音速旅客機。

スマートなシルエットが美しく、日本でも大人気でしたが、いろいろな面で、航空会社泣かせの旅客機でした。超音速の言葉どおり、音速を超える速さで飛ぶことができましたが、その反面、多くのデメリットが生じたのです。スピードが速いだけに、燃料を多く消費し、航続距離が短い。音速をこえたときに生じる「ソニックブーム」を解決できない。

歴史はさまざまな乗り物のスピードアップを実現してきましたが、航空機だけは例外でした。

コンコルドの退役以降、航空業界はスピードの追及をあきらめ、「一つの大型機により多くの乗客を乗せる」を優先するようになりました。そのほうがコストダウンできて、ビジネスとして現実的だからです。

ですが、超音速飛行への夢が完全に消えてしまったわけではありません。最新鋭の技術による超音速旅客機が実現すれば、ロンドンからわずか4時間足らずで、ニューヨークに到着できます。こんなにも迅速な移動手段に、資産家たちが関心を持たないわけがありません。

たとえば、投資会社の創業者でもある資産家のロバート・ベースは、ここ10年の間に、アメリカの航空機メーカー・エアリオン社に、1億ドル(約102億円)余りを投資しました。エアリオン社は、超音速旅客機に取り組んでいる中でも、常に一歩先んじた存在と言われているメーカーです。

現在は定員8~10人のビジネスジェット「エアリオンSBJ」を開発中で、2020年ごろには就航できるだろうと推定されています。

エアリオン社の目標は「太平洋横断の航続距離を持つ航空機」だそうです。コンコルドの問題点の一つは、航続距離が短すぎることでした。それを意識しての目標かもしれません。

また、超音速旅客機の開発に取り組んでいる航空機メーカーは、エアリオン社一社だけではないのです。昨年はガルフストリーム社が、最高速のプライベートジェット機「G650」を市場に投入。マッハ0.925、ほぼ音速に近いスピードです。一機6500万ドルという価格にも関わらず、買い注文が殺到。あまりの人気に、引き渡しは早くとも2017年になるそうです。

スパイク社も超音速旅客機に積極的な企業のひとつといえます。

スパイク社の「S-512」は、窓を取り除くことで空気抵抗を減らし、マッハ1.6での飛行を目標に掲げています。特徴的なのは、機内の壁。巨大スクリーンになっていて、映画の上映はもちろん、現在機体が飛んでいる外の風景を、ライブで上映できるそうです。

これら多くの企業が超音速に取り組んでいるのですが、超音速旅客機に必ずつきものなのが「ソニックブーム」です。航空機がマッハ1よりも速いスピードで飛行すると衝撃波が発生し、雷鳴のような轟音がとどろきます。超音速旅客機が音速で上空を通過すれば、その時の衝撃波だけで、住宅地の窓ガラスくらいは簡単に破壊してしまいます。

アメリカ連邦航空局(FAA)は、ソニックブームによる被害を防ぐため、1973年に超音速旅客機の陸上での飛行を禁止しました。このことはコンコルドの退役にも影響しました。現在では、ボーイングとロッキード・マーチンが、アメリカ航空宇宙局(NASA)とも協力し、ソニックブームを低減する方法を研究しています。

衝撃波の小さい、静かな超音速旅客機を目指しているそうです。実際に飛行するのは2025年以降になると推定されています。この他に、「現在の規制の範囲内で運航できる超音速航空機」の開発も進められています。

エアリオンのジェット機は、海上ではマッハ1.6、陸上では音速を下回る速度で飛ぶよう、速度を変更できます。住宅地などがある陸上では、音速以下のスピードに落とし、ソニックブームを気にしなくてよい海上だけで、超音速を出すことにしたのです。それだけでもかなりのスピードアップにつながることでしょう。

また、リアクション・エンジンズ社のロケット科学者らは、SABREと呼ばれるエンジンの冷却する技術の試験に成功しました。SABREは、航空機が停止した状態から、マッハ5まで加速できます。開発の総予算は3億6000万ポンドと言われていますが、最近、その一部がイギリス政府から提供されました。4年間の開発プログラムの資金として、イギリス政府から6000万ポンド(約104億円)が提供されたのです。

このエンジンを使った航空機が実現すると、今まで21時間かかっていたブリュッセルからシドニーまでが、4時間40分で飛べるようになります。

商業展開までこぎつけるには、十数年かかると言われていますが、マッハ5の「極超音速航空機」の開発への努力は、今も続けられているのです。

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