ANAは国際線で一人勝ちできるか?

規制緩和後に参入したスカイマークやエアドゥ、スターフライヤーなどが赤字にあえぐ中、結局のところ日本の航空会社はJAL=日本航空とANA=全日空の2強が君臨するという形になっています。

LCC(格安航空会社)の躍進により経営が危ぶまれたスターフライヤーが持ち直したのもANAが筆頭株主となって支えたお陰であり、エアバスとの契約問題で窮地に経ったスカイマークも、独立自尊体制を捨て、JALとANAに支援を求めてコードシェア=共同運航便を導入することとなりました。

とはいえ、最初からこのような2強体制であったかというとそうでもありません。そもそもJALは終戦から間もない1951年に政府主導で設立された半官半民の航空会社で、1953年からはすでに国際線にも参入していました。それに対してANAは日本ヘリコプター輸送株式会社と極東航空株式会社という民間会社の合併により設立された国内線専業航空会社でした。

ANAが国際線に参入したのは、1986年のこと。JALに遅れること35年、その時点でJALは世界でもトップクラスの国際線輸送量を誇る航空会社であり、後塵を拝したANAの国際線は赤字続き。現在のスカイマークのように赤字路線から撤退するということもありました。

ANAの国際線が黒字化したのはなんと国際線に参入してから18年後の2004年のこと。国内線では大きなシェアを持っていたとはいえよく国際線から撤退しなかったものだと思います。

では、20年近い赤字から黒字に転じることができたのはなぜか?その要因は1997年設立の国際的な航空連合・スターアライアンスに1999年に加盟したことが大きな要因。ANAは当時スターアライアンスに加盟していた海外の航空会社8社と協調路線をとり、国際線運行のノウハウを学ぶとともに、それらの会社とのコードシェア便を運行して、それまで運行していなかった路線を強化していきました。

そうした努力に加えて、羽田空港の再国際空港化、JALの経営破綻などの外的要因も味方となったとはいえ、長く続く赤字に耐え、他社と協力関係を結び、努力を続けたことがANAをJALと並ぶ2強に押し上げたと言えます。

2014年5月の両社の国際線旅客数はJALが約62万人、ANAが58万人でした。一見まだJALのほうが強いように見えます。しかし、有償、つまり運賃を払った旅客数に飛行距離を掛けた「有償旅客キロ」ではJALは29億1163万、ANAは29億5294万と、ANAのほうが上回っています。

ANAとJALは2014年に至って国際線シェアでほぼ並んだと言ってもいいでしょう。

実はここにもJALの経営破綻が大きく影響しています。国土交通省はJALが経営破綻したことを理由に、経営破綻前は均等だった羽田空港の発着枠をANAに11、JALに5という配分にしました。これによりANAは羽田発着の国際線を10路線13便から17路線23便へと大幅に増便。それが有償旅客キロでJALを上回った理由です。

また、成田空港をハブに、アジア各国から北米への乗り継ぎ客からの支持を得ているという点も挙げられるでしょう。

しかし、JALも会社立て直しを請け負った稲盛和夫氏による経営刷新で業績をV字回復してきています。羽田空港の発着便枠を元のように均等配分に戻されたら、有償旅客キロでもまたJALのほうが上回るということもあるかもしれません。

ANAは2016年度までに国際線の収入を5485億円にまで引き上げるという計画を立てていますが、今後のJALの動向によってはどう転ぶか予断を許さないところです。あるいは自然災害や戦争などといったことで空港需要そのものが落ちるという可能性もないとは言い切れないでしょう。

2020年の東京オリンピックが、国内大手二社の追い風となるか、LCCも含めた海外の航空会社にシェアを奪われてしまうか、国際的な競争という観点から見ると、国内二社で争うのではなく、一致協力してがんばってほしいものだと思います。

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