雪や氷で、旅客機が飛べなくなる理由とは

旅客機の運航にとって、雪はとてもやっかいなものです。

主翼に雪が降り積もったり、氷が付着したりすると、飛行に大きな影響を与えてしまいます。

エンジン全開で離陸して、雪を吹き飛ばせばよいのではないかと考えてしまいますが、駐機中の機体は冷え切っていますから、雪や氷で凍りついていて、そうはいかないのです。

それに、そのまま離陸しては、旅客機の離陸性能は大きく低下しますし危険もあります。翼に氷が付着すると、翼の表面の形が、付着物の形のとおりに変わってしまったのと同じような状態になるからです。本来、翼の上面に空気が流れることで発生するはずの揚力が、翼の形が変わってしまったことにより、発生しなくなるのです。

アメリカの実験で「翼に厚さ0.8ミリの氷が付着すると、離陸時の揚力が8パーセント失われる」というデータがあります。そこで冬場の空港には、「デ・アイシングカー」という特殊車両が待機しています。

凍りついた機体の表面に除氷液をかけて、雪や氷を溶かす作業車です。車両の本体部分には、約4000リットルの除氷液を積載しています。これで約10機に作業することができます。

大型機ならデ・アイシングカー2台で、小型機なら1台で作業します。旅客機の大きさに合わせて操縦席の高さが調整できるようになっていてそこから伸びる細長いブームも伸縮自在。

ノズル先端から機体に向かって除氷液が吹き付けられます。

でも、旅客機が飛ぶ高度1万メートルの上空は、マイナス50度です。冬場の空港よりもずっと、機体が凍りやすいのではないのでしょうか。

実は上空は空気が乾燥しているため、機体が凍ることはありません。雪や氷が付着するとすれば、もっと低い高度を飛んで、水分を含む雲の中などを飛行した場合です。

旅客機には着氷を防ぐ工夫もされています。

コクピットで「防氷スイッチ」を入れると、「ブリード・エア」という空気が主翼のダクトに流れます。ブリード・エアとはエンジンから抜き取った高温の空気で、これで翼の表面が温められ、雪や氷を溶かすのです。

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