LCC専用のターミナルは格差の象徴?

各航空会社は、駐機料や離発着料など、各空港規定の利用料を支払わなければなりません。そのため、地方を拠点とするLCCは少なくありません。しかし、メインの空港を利用するLCCも、勿論あります。

ただし、大手の航空会社と共同で使っているわけではありません。これらの費用を出来るだけ低く抑えるために、国際線ターミナルから少し離れたところに、LCC専用のターミナルを設置して使用しています。

例えば、2013年10月末、関西国際空港に格安航空会社(LCC)専用の第2ターミナルビルがオープンしました。JR西日本と南海電気鉄道の関西空港駅近くから、無料のシャトルバスで第2ターミナルへアクセスします。

施設の簡素化を徹底し、外観はプレハブ倉庫のようで、内部も天井は鉄骨がむき出し、エスカレーターもありません。白を基調にした明るい雰囲気ではありますが、殺風景な印象は否めません。

整備に1500億円をかけた第1ターミナルに対し、第2ターミナルは約18分の1の85億円のため、当然といえば当然で、第1ターミナルとは雲泥の差です。

しかし、実際はLCCと新関西空港会社の思いが一致した施設で、双方とも利用拡大に努めています。

しばらくは、この第2ターミナルは関空を拠点とするピーチ・アビエーションが独占的に使用するようになっています。ピーチは、これまで国内線では第1ターミナルの反対側に位置する複合施設エアロプラザ内の暫定施設を使っていました。

しかし、第1ターミナルでは、施設の賃料に加え、チェックインカウンター、手荷物検査場、航空機の牽引車など、施設の使用料が高くつきます。そこで、エアロプラザなら賃料が安く、カウンターも不要で、コストを低く抑えることができます。

一方で、国際線は税関などの手続きのため、第1ターミナルを使わざるを得ませんでした。これに対し、新ターミナルは税関手続きなどの設備も設け、国内線と国際線の両方が利用できるようになっています。

これにより、トータルで賃料を抑えることができます

また、航空機はバックが出来ないため、バックをするための牽引車が必要です。しかしこの新ターミナルでは航空機が自分で移動して駐機場に出入りするため、牽引車が必要ないなど、コストを大幅に抑えられるようになりました。

国内線と国際線の乗り継ぎも楽になり、ピーチの乗り継ぎ客が第1ターミナルとエアロプラザを移動する「大名行列」もなくなりました。

しかし、メインのターミナルから離れているための不便もあります。新ターミナルには搭乗橋がないため、飛行機までは徒歩で移動しなければならず、また、待合室から搭乗までの通路に冷暖房はありません。

それでも、「運賃が安いから仕方がない。少しの間のことだから」と、利用者は好意的にとらえています。

この関西空港では、平成26年夏には、国際線便数に占めるLCCの割合を現在の14%から26%に引き上げる方針です。長く利用低迷にあえいできた関空にとって、集客力の高いLCCの誘致は成長の要です。

見た目は安っぽく見える第2ターミナルですが、商業スペースは充実しています。お酒や化粧品を試せるコーナーがある免税店や、24時間営業のカフェなど17店舗が入っており、「商業系収入もしっかりと高める」(安藤社長)という考えです。

また、ターミナル脇には芝生の広場やジョギングコースなどを備えた公園も設置して、航空機の利用者以外も呼び込み、収入増につなげる考えです。

安い運賃で利用者を引きつけたいLCCと、安い使用料でLCCを呼び込みたい新関空会社の双方にとって、LCC専用ターミナルは、むしろなくてはならない施設だといえるのではないでしょうか。

このようなLCC専用のターミナルはアジアやヨーロッパでも次々と出てきています。

シンガポールのチェンギ空港では、パジェットターミナルと呼ばれるLCC専用のターミナルが誕生し、フランスのパリではシャルル・ド・ゴール空港にT3が開設されました。

どの施設もLCC専用のターミナルはつくりがシンプルで、内部も骨組みが露呈しており、メインターミナルと比べると「格差」がみられます。

しかし、どのLCC専用ターミナルでも、チェックインカウンターやレストラン・カフェ、ファーストフード店、売店・免税店など、あくまでも必要最低限ではありますが、空港としての最低限の機能は完備されています。

現在のLCCの認知度の拡大を受けて、成田でもLCC専用ターミナルの建設構想がでています。今後、日本でもアジアやヨーロッパのような光景を目にする日が来るかもしれません。

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