躍進するエディハド航空、その要因はオイルマネーだけ?

現在、世界の航空市場で「台風の目」と言われている航空会社があります。それが、UAE=アラブ首長国連邦の首都アブダビ国際空港を拠点とする「エティハド航空(イッティハード航空)」です。日本ではあまり馴染みのない航空会社ですが、実はアブダビ-成田間の直行便と、アブダビから北京経由の中部国際空港便を就航させています。

全日空とも提携していて、成田や中部ではエティハド航空利用者も全日空のラウンジを利用できる他、マイレージプログラムの共有もしています。

エティハド航空はアラブ首長国連邦の国営会社。オイルマネーをバックに急成長していますが、ワールド・トラベル・アワードから優れたサービスのみに選ばれる「ワールド・リーディング・エアライン」にも受賞するなど、「国営企業」のイメージとはかけ離れた細やかなサービスも評価されています。

現在アジアではシンガポールのチャンギ空港、韓国の仁川国際空港、中国の北京首都国際空港などがアジア地区でのハブ空港としての覇権を争い、日本は蚊帳の外ですが、アブダビ国際空港はヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ大陸という非常に大きな規模でのハブ空港となるべく、2017年完成を目指して拡張工事をしているところです。

そのアブダビ国際空港を拠点とするエティハド航空は、世界的なハブ空港となる戦略の要ともいえ、そのために保有機材をどんどん増やしている真っ最中です。

エティハド航空は2014年にボーイング787-9とエアバスA380の導入を発表。2014年12月には、アブダビ-ロンドン・ヒースロー空港間にA380を用いた便を就航させました。

このA380のアブダビ-ヒースロー便は、なんといってもその豪華さが大きな話題となっています。まずビジネスクラス「ステューディオ」。他社ではファーストクラスと言っても遜色がないコンパートメントのシートにはミニバーまで提供されています。

そしてファーストクラス「アパートメント」は完全に個室。24インチのモニターを設置した部屋にはアームチェアの他に81インチ(約2メートル)のベッドにもなる長椅子も置かれています。

普通ならこの時点で十分豪華旅客機と言っても問題ないはずですが、エティハド航空のA380にはさらにその上の「ザ・レジデンス」クラスも用意されています。「ザ・レジデンス」クラスは、飛行機にもかかわらずリビングルームとベッドルームが分かれており、さらにバスルームと専用トイレまで設置されています。

そして、機内では「エティハドバトラー」という執事がお世話。空港では高級リムジンでの送迎も含めた「VIP トラベルコンシェルジュサービス」が付きます。

ちなみのこのアブダビ-ヒースロー便のザ・レジデンスは約200万円するそうですが、王族やオイル長者、政府高官などが利用するとのことです。

さて、一方のボーイング787-9は2014年12月にアブダビ-ドイツ・デュッセルドルフ空港便が就航、2015年1月にはアメリカ・ワシントンDC便と、インド・ムンバイ便も就航されます。

こちらもビジネスクラスはA380と同様の「ステューディオ」。ファーストクラスのほうは「ファースト・スイート」となります。「ファースト・スイート」はA380の「アパートメント」よりは狭くなるものの個室となっていて、こちらもシートとベッドは別々になっており、ベッドとシートを結合してダブルベッドにすることもできます。

実はビジネスやファーストクラスが豪華なだけではなく、A380・787-9ともにエコノミークラスには座席幅が広めで11インチのモニターがついた「スマートシート」が導入され、エコノミークラスといえども快適なフライトを楽しめるようになっています。

このような「超豪華路線」は、他社のような画一的なクラスやシートを提供する路線とは一線を画し、路線や機体によって顧客ニーズが違うというエティハド航空独自の理論によって2008年からスタートしたプロジェクトの集大成です。産油国ならではの経営戦略であると言えます。

産油国であるメリットはいわゆる「オイルマネー」だけではなく、航空燃料を自給自足できるという点にもあります。他国の航空会社が燃料費により経営を圧迫される中で、これはとてつもなく大きなアドバンテージです。

エティハド航空は上記の通りアラブ首長国連邦の国営企業ということで、役員には王族が多数選ばれています。しかし意外なことにCEOのジェームス・ホーガン氏はオーストラリア人です(「巨人たちの星」シリーズ の作家ジェームス・P・ホーガンとは別人)。

ホーガン氏は航空会社経営のプロであり、ヨーロッパでは顧客ニーズに応えてダブリン、ミュンヘン、デュッセルドルフなど「第2都市」への便数を増やすとともに、アジア経済の成長を見越して中国、シンガポール、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナムなどへも就航するなどの積極策をとっています。

また、歴史ある航空会社にはできないようなフットワークの軽さでフレキシブルな経営を行い、重要ではない業務は外部委託するなど、時代に則した対応をとるようにしているとのことです。

つまり、日本の航空会社が負け惜しみ的に言うような「自分の庭で取れるオイルで運行しているから」というだけのことで躍進しているのではなく、そこにあぐらをかかずに地の利を活かし、顧客ニーズに真摯に応えるという経営こそが、2003年の就航からわずか12年しか経たないにもかかわらず世界23位にまで成長することができた要因でしょう。

逆に、日本の航空会社はそんな「負けた時の言い訳」を用意しているようでは到底エティハド航空にかなうはずがありません。

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