離陸できないことはあっても、「着陸」は必ずできる

パイロットではない普通の人に、ジャンボ機を離陸させることはできません。ジャンボ機の離陸にはオートパイロットは使わないのですが、それだけが理由ではありません。

一方、離陸して空を飛んでいるジャンボ機を着地させることは、パイロットでなくても誰にでもできます。なんの技術も要らないからです。紙飛行機を投げると、飛んだり飛ばなかったりしますが、ともかく着地だけはします。それと同じことです。

離陸した航空機に何もしないでおくと、失速するか、燃料が尽きて飛べなくなって、地面に到達します。いったん離陸したら、着地しない飛行機はないのです。

ただ、紙飛行機とジャンボ機が決定的に違うのが、『ただ地面に到達したというだけでは、着陸の目的を果たさない』というポイントです。

ジャンボ機は、紙飛行機とは違います。目的地がどんなに遠くても、離陸してからずっと、着陸し停止する瞬間まで、一瞬もバランスを失わず、乗客や貨物に影響を与えずにフライトしなければなりません。

「まっすぐすーっと静かに止まって、機長の操縦のあまりの見事さに、かえってショックを受けた」

技術の高いベテランパイロットは、それくらい静かにジャンボ機を滑走路におろすことができます。そこまで行かなくとも、着陸するジャンボ機は途中で傾いたりしてはいけないし、激しく振動したり、どすんと着陸して、乗客に怖い思いをさせてはいけないのです。

そのためには、飛行機そのものの状態や、高度や天候など、飛行機が置かれている状況を正確に把握します。その上で状況にふさわしい「バランスよく静かに着陸できるポイント」を探し、それをクリアした着陸を実行しなければなりません。

飛行機の状態と、周囲の状況を把握するためには、たくさんの測定が必要。その測定値にもとづいて「静かに着陸するにはどんな角度、どんな速度で滑走路に向かえばいいか」は、今はコンピュータが計算してくれます。

コンピュータのないころは、高度でも速度でも測定はアナログ式、一つの計器が表示できるのは一つの情報だけでした。それらすべての情報を統合し、状況にふさわしい行動を判断するのは、パイロットの経験と技術。地形や時間帯、気象などの条件が悪ければ、パイロットの勘だけが頼りの着陸もありでした。

今はそういった時代ではなくなりつつあります。機体の進化によって、パイロットの負担はずいぶん減りました。

でも、パイロットの技術が必要なくなったわけではありません。人間がコンピュータそのものを再現できないと同じで、コンピュータも人間そのものを再現することはできないのです。

空港に無数に到着する航空機を眺めていると、着陸はどうということのない簡単な作業に見えますが、機械にできること、人間にできることが折りあっているから、旅客機は精度の高いバランスを維持して着地できるのです。

それにどういうわけか、パイロットの技術と勘は、コンピュータによる計算を超えて、ありえない状況で着陸成功を果たしてしまいます。

前述の、「まっすぐすーっと静かに止まって、機長の操縦のあまりの見事さに、かえってショックを受けた」

かつてそう讃えられたパイロットがいますが、その時のジャンボ機は、故障でギアが出なくて、使えたのは前後の右側車輪のみでした。

実際に日本の空港で行われた不時着のことでした。

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