福岡空港の滑走路増設が決定して浮かび上がった問題点

日本の各空港が抱える大きな問題のひとつに、アクセスの利便性があります。

羽田空港はかなり利便性がいいほうですが、それでも国際線ターミナルからだと東京モノレールで浜松町までは16分、京急で蒲田までは23分かかります。

ついでに言うとモノレールの浜松町駅から山手線に乗り換えるまでは10分近くかかる上、京急の空港線は本数が少ないので、駅でだいぶ待たされることが多いもの。

私情を挟むと羽田空港からの横浜方面行きの本数はより少なく、タイミング的には蒲田行きに乗ってから、蒲田で乗り換えたほうが早いということも多いのでなんとかしてほしいところ。

そういう点で言うと九州の福岡空港の利便性は最高で、JR福岡駅までは地下鉄で5分程度。ただ、その利便性のマイナスポイントもあり、それは市街地にほぼ隣接しているために、朝7時から夜10時まで、つまり15時間しか運用できないということ。

運用時間が15時間ということは、24時間空港と比べて9時間も休止時間があるということであり、九州の玄関口という役割を果たすためには、わずか15時間の間にフライトスケジュールを詰め込まねばならないということになります。

2013年度の福岡空港の年間発着回数は17万5千回弱、一方羽田空港はおよそ40万7000回。数だけで比べると羽田空港が圧倒的に多いように見えます。

しかし羽田空港は24時間運用の上に滑走路は4本です。羽田の4本の滑走路は均等に使われているわけではありませんが、単純に4で割ると滑走路1本につき10万回ほど。

対して福岡空港は15時間運用で滑走路は1本のみ。どちらが混雑した空港なのかは言うまでもありません。

こうした詰め込み運用のため、福岡空港では着陸待ちや離陸待ちが常態化。特に離陸待ちは誘導路に離陸待ちの飛行機が詰まり、まるで雨の日の夜の駅前のタクシー乗り場のごとき状況になっています。乗客は座席についてから離陸まで1時間近く待たされることも珍しくありません。

そのような混雑状況を解決するため、福岡沖に関空のような洋上空港を新設するという案もありました。

国土交通省の調査によると、新空港の建設については、24時間化や騒音問題の解消など肯定的な意見もあったものの、アクセスの利便性の低下や予算問題などへのネガティブな意見が多く、逆に滑走路増設については、利便性の維持や初期投資を抑えられるなどといった肯定的な意見のほうが多数を占めていました。

そこで政府は、現行の福岡空港にもう一本滑走路を増設することで、空港の混雑と、混雑による深刻な遅延問題を解消する方針を決定しました。

新しい滑走路は、現在ある滑走路の南西方面、国際線旅客ターミナル寄りに平行する形で作られる予定です。現行滑走路は2,800メートル、それに対して第2滑走路は2,500メートル。10年後の運用開始を目指し、4億8千万円の予算が投入されます。

国土交通省の九州地方整備局港湾空港部は2015年5月現在、環境影響評価の手続きを進めており、同港湾航空部による「福岡空港プロジェクト」は、これまでに何度かの滑走路増設による境影響評価技術検討委員会を開催して準備を進めています。

しかし、新滑走路の増設が決定したといっても、運用開始が予定される10年後までは現在の混雑が継続することになります。そこで現在、並行誘導路の二重化工事が進められています。

福岡空港には滑走路の混雑以外にも、昭和44年の開港以来利用客の増加に応じて泥縄的に増設してきたために、国内線ターミナルが無駄に3つにわかれているという問題もありました。こちらについては福岡空港ビルディング株式会社が2012年より、新しいターミナルビルの事業計画を進めてきていましたが、ようやくそれが施工開始の段階にまで至っています。

新しい統合国内線ターミナルの予算は380億円。地下2階、地上5階で完成予定は2019年の3月となっています。完成後には地下鉄駅からチェックインカウンターまで直通エスカレーターが設置され、それとともに出発客と到着客の動線が完全に分離されることで利用客の利便性が向上するとともに、セキュリティ機能も強化されます。

また、商業施設スペースを充実させ、飲食店などを誘致、ターミナル屋上には自由に出入りできる公園を整備して、旅客以外の利用客増加も狙っています。

ただ、国内線ターミナルを整備してもまだ国際線ターミナルとの連絡という問題が残っています。福岡空港は国際線ターミナルが国内線ターミナル群の滑走路を挟んだ反対側に建っています。しかも、国際線ターミナルに行くには、国内線ターミナルから連絡バスに乗って、滑走路の外側を大回りに通らなくてはいけません。

福岡空港の全体図を見ると、国際線ターミナルがいかに無計画に建設されたものかがよくわかります。滑走路の増設が外国からの訪問客を増やすためのものでもあると言うのであれば、国際線ターミナルのアクセス性の悪さこそ解消しなければならないことでしょう。

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