ドリームライナー787・次世代機A350もLCCで

2011年10月、ANAが成田~香港間で、B787型として世界初の商業運航を、同年11月、羽田~岡山・広島線で国内線定期便運航を開始して話題となったB787。その後も大阪伊丹や山口宇部に就航し、2012年からは羽田~北京や羽田~フランクフルトなど、国際線でも運航を始めました。

B787は、2004年4月にANAが50機発注したことにより開発がスタートしました。その後、JALやデルタ航空、ユナイテッド航空など多くの大手航空会社が発注しています。

では、そこまで多くの航空会社や乗客を惹きつけるB787とはどのような機種なのでしょうか。

まずは、胴体の部分。

機体のボディー重量の大半を、カーボン複合材といわれる新素材が使われています。このカーボン複合材は、これまで戦闘機では使用実績がありましたが、今回世界で初めて、787の旅客機で使用されました。

カーボン複合材は、炭素繊維でできており、非常に剛性が高く、耐腐食性にも優れています。また、強度もアルミ合金の倍以上、重さは約半分。ちなみに787で使用されるカーボン複合材の原材料は、東レが独占で納入を担当しています。

さらに、航空機では三菱重工が開発した航空自衛隊F2戦闘機の主翼構造が世界で最初に採用されており、日本の技術が、この787に貢献していると言えるのではないでしょうか。そしてボディーは従来機よりもかなり低く、これは貨物の積み下ろしや整備などの運用効率の点でとてもメリットがあります。

次に翼ですが、787の翼はこれまでのものよりも細くて長く、スムーズ・ウイング・テクノロジーと名づけられており、従来の翼より遥かに揚力が高く、空気抵抗が非常に低くなっています。つまり、燃料の消費がより少なくてすむのです。しかし、巨大な旅客機において、長い翼を支えるには強度が必要となります。この翼の実現に一役買ったのが、ボディにも使われているカーボン複合材。

エンジンも、燃費がよく推力も大きい多軸ターボファンエンジンと呼ばれるものを標準採用しており、経済性・メンテナンス性をより高めるために、ほぼ全ての照明がLEDに切り替わりました。

また、客席の窓が大きくなり、視界もよくなりました。機内の与圧も低くなり、耳がツーンとする不快感なくなりました。さらに、これまでは一部の航空機のコックピットだけにしか搭載されてこなかった加湿器を客席に採用できるようになり、喉や鼻の乾燥が解消され、航空会社にとってはドリンクサービスの必要性がかなり減るという、思わぬ効果も出ているとか。

これらは全て、ボディーにカーボン複合材を採用したことで実現可能となったもので、カーボン複合材の採用は乗客にとっても、航行中の快適性の面で貢献しています。

787は発表と共に、夢の次世代航空機ともてはやされてきましたが、そんなイメージとは逆に、開発にはいくつもの苦難に満ちていました。度重なる課題の発生や納期延期は数度にも渡り、計画には約3年弱の遅れを生じたそうです。

しかし「世界初」がいくつも付く先進的な機体を開発したことを考えると、これはリスクに十分見合った航空機が開発できたのではないでしょうか。

そして、先程も述べましたが、特にカーボン複合材の材料の全てと、主翼の基本構造は日本が担当しており、787はその製造の35%を日本が担っています。使用されているパーツや重要性を考慮すると日本の担当率は実質60%を上回ると言われています。つまり、787は日本の航空技術なくしては、成立し得なかった航空機であると言えるのではないでしょうか。

この航空機の本当の先進性は、単に燃費がいいということだけではなく、乗客の客室環境を激変させ、これからの航空機産業や航空旅客業界の概念や常識をも変えていく可能性があることではないでしょうか。

また、ボーイングは10月に、オーストラリアのLCCであるジェットスター航空に、787の引き渡しを行ったことを発表しました。この787の引き渡しは、LCCとして初めての引き渡しです。

中型機787の座席規模がもたらすメリットは、満席に近い状態にしやすいことは勿論ですが、以前は座席を埋めきれないという理由から断念していた、大型機でしか運航できない距離に位置する地域への就航を、航続距離がこれまでの中型機と比較して飛躍的に伸びた787の場合、その座席規模により採算面からも運航可能になるということです。

このことによって、たとえば東京~南アフリカ、東京~マドリッドなど、過去に運航休止となった路線は勿論、これまで採算面で見合わせざるを得なかった路線への就航を柔軟に検討することができるようになったのです。

ジェットスターは787をオーストラリアの国内線に導入し、その後、国際線での運航を予定しています。

787の開発により、旅客機メーカーの競争も影響を受けています。

競合のエアバスは、次世代中型のワイドボディ旅客機としてA350XWB、三菱重工業は、独自旅客機を開発しました。

ジェットスターが導入する787が就航する路線の成否が、これから他のLCCの、787やA350の導入に影響を与えるでしょう。そして路線網構築を変える可能性を秘めた787を主力機材として導入することにより、LCCが、旅のあり方そのものを大きく変えてしまう日が来るかもしれません。

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