地上を走行している航空機を安全に止めるためには

フライト中も、離着陸で滑走路を走行するときも、航空機のスピードは一般車両とは比べ物になりません。

走行中の自動車から飛行機を眺めていると、見ているうちに飛行機がどこか遠くへ行ってしまい、見えなくなってしまいます。試しにそのまま車で飛行機を追いかけたとしても、到底追いつけません。

航空機の滑走路での走行についても、F1と比較しなければ話が始まらないくらい。滑走路自体も、航空機が何度も離着陸する衝撃に耐えるため、普通の道路よりずっと頑丈につくられています。

航空機が滑走路を走行するのと、一般道路を車が走行するのとでは、さまざまな条件が違っています。「いかに航空機を安全にブレーキングして停止させるか」ということは、いかにフライトするかを考える上で欠かせない、大きな課題です。

ブレーキングといえば「ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)」

急ブレーキ、または滑りやすい路面でブレーキングする際、車輪がロックして横すべりなどを起こす現象を低減する装置。路面に油が落ちているところを通ると、タイヤがすべってしまいます。人も油を踏んだら足元を取られて転んでしまいます。これは、摩擦が全くなくなるためです。高速道路で雨を警戒する理由の一つも、雨で路面の摩擦力が落ちるためです。

とっさのブレーキングのとき、条件の悪い中でブレーキングしなければならないとき、運転者をサポートしてくれるのがABS。タイヤと滑走路面との間に生じる摩擦力は、約10%の滑りが生じるくらいが良いとされています。ABSがあれば、ドライバーがいかにブレーキングするかに神経を使わなくても、自動車に備わっている装置で、自動的にその数値に合わせてくれます。

現在はすっかり定着していますが、古くから身近にある装置というわけではありません。見かける車ほぼすべてについているだろうという状態になったのは、比較的最近のこと。

しかし、ABSが航空機に導入されたのは車よりずっと早く、数十年先駆けていました。

航空機の場合、着陸滑走でラダー・ペダルをいっぱいに踏み込んだとき、メータリング・バルブが開きます。

このとき、ブレーキを作動させる作動油がアンチスキッド・バルブを経由し、各車輪のブレーキが作動しますが、ブレーキングするカが強すぎたときには、制御装置が感知します。アンチスキッド・バルブに情報が送られ、それまで車輪に100%の作動油を流していたところを、適切な量まで減少させます。

それによって、パイロットが思いきりブレーキングしたとしても、車輪のロックが起きないようになっているのです。

他に、地上を走行している航空機の減速に使われるのが「オート・ブレーキ」

飛行機が接地すると同時にブレーキがかかり、着陸滑走中は一定のレベルで減速するようブレーキ圧を調整します。

オート・ブレーキには選択スイッチがあり、着陸前に設定しておけます。路面が晴天で乾燥しているか、雨天で濡れているかなど、滑走路の状態によって、いくつかの選択肢があります。

これをセッティングしておけば、車輪が接地すると同時に自動でブレーキがかかります。解除したいときはブレーキ・ペダルを踏み込むと、そのワンアクションで、オート・ブレーキの解除とブレーキングそのものが同時に行えます。

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