旅客機の中で耳が痛くなる理由と解消方法

旅客機は上空1万mを飛行するのですが、機内では外気が遮断されて、おおむね適当な気圧・温度・湿度に保たれています。旅客機ならではの乾燥は困りものですが、地上から上空に達するまで、機外の気圧や気温がどれだけ変化していくかを考えると、それを感じさせないほど機内の環境が一定に保たれているのは、実はすごい技術かもしれません。

機内の環境を維持している要素の一つは、ジェット旅客機ならではの、エンジンからつくられる空気が機内に送りこまれているからです。

客室には何百人もの乗客・乗員がおり、一人ひとりが呼吸をしています。人は安静な状態で、1分間に約6~8ℓの空気を呼吸しているということですから、500人が乗っているジャンボ機(ボーイング747)では、1分間に4000ℓの空気が呼吸に使われていることになります。

人が吐き出した空気は二酸化炭素を多く含み、汚れています。いかに新鮮な空気を送りこみつづけるとしても、どこかで排気しなければ、機内の空気は汚れ、乗客が息苦しくなってしまいます。

そこで、機内には空気を送りこむだけでなく、排気をするしくみも備えられており、空気が常に循環し、換気されるようになっています。ジャンボ機の場合、機内に送りこまれる空気の量は1分間に20万ℓ。これは乗客500人が1分間に消費する空気量の50倍です。

空気は空調からダクトを通り、天井の送風ロから送りこまれていますが、排気は機体両側の床下から抜けて、機体後方に流れ、胴体後方下部や中央左側に設けられた「アウトフロー・バルブ(圧力調整弁)」を通して機外に吐き出されています。

アウトフロー・バルブは、空気の排出量を加減して、機内の気圧を調整する役割を果たしています。機内の気圧と外気圧との差が開きすぎないようにするため、機内の気圧が高くなりすぎれば排気量を増やし、機内の気圧が低すぎれば排気を一時的にストップさせるなど、気圧高度計や機内差圧計から得られる信号に応じて、自動的に開閉するしくみになっています。

もし、アウトフロー・バルブが故障したら、機内気圧の調整ができなくなるため、乗客乗員がたいへんなことになってしまいます。それにそなえて、自動調整が万一効かなくなったときのために、コックピットで手動でも操作できるようになっています。

旅客機の機内は乗員や乗客が快適にすごせるように、地上に近い気圧を保つため「与圧」つまり圧力を上げてあります。上空1万mでは、地上における1気圧の4分の1程度しかないのですが、これはそのままでは人が生きていられない気圧です。

もし上空で、旅客機の外に出てみたら、たいへんなことになります。旅客機が飛んでいる高度の気圧はそういうものですから、機内では機外よりずっと気圧を高くしてあるのです。ほんとうは地上と同じ1気圧まで上げておきたいところですが、構造的に無理なので、0.75~8気圧まで上げます。これを「与圧」といいます。

このくらいの気圧でまあまあ何とかなりますが、地上にいたときと比べると、機内の気圧は0.2~0.25足りません。

気圧が下がると、気体の体積は膨らむため、たとえば、地上で密封したお菓子の袋を上空でとり出してみると、パンパンに膨れていることがあります。これは気圧の差で起きる現象です。お菓子の袋を地上で密封したとき、袋の中に閉じ込めた空気は1気圧。上空にいる旅客機の空気は0.75気圧ですから、その空気の中にお菓子の袋を置いておくと、気圧の差によって、袋内部の空気が外に向かって周囲の空気を押すような状態になります。これだと計算上、25%の膨張です。

実はこれと同じような現象が、人間の体内でも起こっているのです。体内のあらゆる空洞に存在しているガスも、機体が上空に上がると膨張します。

よく知られていますが、耳の鼓膜の内側の空気が膨れる現象です。特に離陸から上昇にかけて、急激に気圧が下がりはじめる最中に、耳がツーンとして、痛むことがあります。これは、お菓子の袋の中の空気と同じようなしくみで、鼓膜内にある空気が外の空気を押し、それが鼓膜を押すためです。

逆に、機体が降下するときも鼓膜が痛く感じることがあり、このときは気圧の変化によって鼓膜の外の空気が膨張し、鼓膜を内側に押しこむために起こる痛みです。なれない人はびっくりしますが、あくびをしたり、つばを飲みこんだり、キャンディーをなめるとすぐに治ります。客室乗務員によって、そのためのキャンディーが配布されることもあります。

ちなみに、上空における体内ガスの膨張は、鼓膜のなかだけではありません。航空会社のなかには、搭乗前に体内にガスを発生させやすい食物や飲物はできるだけ控えるよう、注意を促しているところもあるくらいです。

搭乗前に小腹が空いたからと焼き芋や甘栗を食べたり、これらを機内に持ちこんで食べると、地上で口にしたときよりも、お腹にガスがたまりやすくなります。別のお菓子にしたほうがいいのかもしれません。

関連記事

おすすめ記事

ページ上部へ戻る