スイッチだけで、ジャンボ機のエンジンがスタートできる理由

ボーイング747-400という現行のジャンボ機があります。747-300の改良型で、外観の違いはウイングレットがあるかないか程度。

見かけが同じでは「新機種導入」のイメージが作りにくいので、400を新しく導入した航空会社では、さまざまなキャッチコピーを考え出して宣伝しました。日本航空では「スカイクルーザー」、全日空では「テクノジャンボ」、海外にも400にニックネームをつけて宣伝していた航空会社があります。

しかし、たいして変わりがないのは見かけだけ。300と400の構造には、大きな違いがありました。

400からは、機長と副操縦士の2人だけでジャンボ機が運航できるようになったのです。それまでは航空機関士も含めた3人が必要で、これは革命的なことでした。400は宣伝のためのニックネームとは別に「ハイテクジャンボ」と称されるようになりました。

その後は747-400の貨物型の「400F」、貨客混載型の「400コンビ」、航続距離延長型「400ER」、国内線専用の「400D」などが開発され、ボーイング747ファミリーの中では最多の生産数となる633機を記録して、2009年9月をもって生産終了となりました。

ハイテクジャンボという言葉が生まれたころ、747-300までのボーイング747が「クラッシック・ジャンボ」と称されるようになりました。747の300と400を境目に、ジャンボ機を分けて考える慣習ができたのです。

頭上と手元のスイッチを入れて、EICASで確認して終わり。それを4回。ここまで簡単にジャンボ機のエンジンを始動できるようになったのも、この400から。

それ以前の「クラシック・ジャンボ」の場合、エンジンをスタートする手順は全く違っています。

まず、「エンジン・イグニッション・スイッチ」をONにします。そこからがスタート。

この操作でAPUからの高圧空気がエンジン・スターターを回し、エンジンが回転を始めます。エンジンがどのぐらいの回転になったか、「回転計」で確認します。回転計は100%まであり、100%がエンジンがフル回転しているということです。

この回転計が10%を指示したところで、「燃料開閉レバー」を開にします。燃料がエンジンの燃焼室に流れ込み、しぱらくすると点火します。回転計が50%に達し、「排気ガス温度計」の上昇を確認したら、エンジン・イグニッション・スイッチをOFFにします。ここまでです。

めったにありませんが、クラッシック・ジャンボのエンジン・スタートがうまく行かないときは、ほとんどが3つのうちのどれかのパターンで、それぞれ名前がついていました。

・「バング・スタート」エンジンが自力運転しない現象で、スターターの回転不足や、燃料の流量の不足。

・「ホット・スタート」燃焼室へ燃料がうまく流れなかったとき、排気ガス温度が上昇しすぎる現象です。タービンなどが焼けてしまうことがあり、エンジンごと交換することもありました。

・「ウェット・スタート」燃焼室へ燃料が多く流れすぎたとき、燃料がうまく着火しない現象です。燃料と空気の混合比は1対14~18くらいとされ、この比率がうまくいかないと、このトラブルになったようです。

400では、この3つのトラブルの対処法が考え出されました。たとえば排気ガス温度が750℃以上になったら、燃焼室にいく燃料が自動でストップします。他の2つのトラブルにも自動で対応可能となったため、スイッチだけのエンジン・スタートが実現できたのです。

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