パイロット専用トイレの存在は本当か!?

ジャンボ機のパイロットは、なんとも過酷な職業です。技術的な面はもちろんですが、それ以外にも、何百人もの人間の命を預かったり、時差に悩まされたりと、それはもう、きわめて神経を使う大変な職業なのです。こうした大小さまざまな特殊事情のなかには、思った以上に深刻なものもあります。

そのひとつが「トイレの問題」です。パイロットだって人間である以上、当然「生理現象」は起こりますし、そうなればトイレにも行かなければなりません。国内線ならまだしも、搭乗時間が数時間から、優に十数時間にも及ぶ国際線では、運航中に一度もトイレに行かないほうが不自然です。

では、彼らの「トイレ」はどこにあるのでしょうか。コクピット内にある「パイロット専用トイレ」?いえいえ、あの狭いコクピットのなかに、そんなものは存在しません。ではまさか、コクピット内に携帯用のトイレを持ちこんで・・・なんてことでもありません。

答えは案外単純。二階前方にある乗客用のトイレ、そこをコクピットのクルーも使わせてもらっています。つまり、用をたす際は、一度コクピットを出ることになります。コクピット内には、トイレが使用中かどうかを示すランプがあり、消えていればトイレは使われていません。

ですが油断は禁物、ランプが消えているのを確認して、いざコクピットを出ようとした瞬間、いきなり点灯、といったことも少なくないからです。そこで重宝するのが「コクピットの窓」です。といっても、前方や横のではありません。

実はコクピットにはもうひとつ窓があるのをご存知でしょうか。直径1センチ程度と非常に小さい「のぞき穴」が、実はコクピットのドアにつけられています。これは、機外ではなく機内を見るためのもので、本来の目的はコクピットに入ろうとする者のチェックにあります。

トイレに行く際は、こののぞき穴から、まだ使用中のランプが点いているトイレを虎視眈々とねらい、利用者が出てきた瞬間、速攻でGo!

もちろん、運航の安全をコクピット内の他のクルーに任せた上のことです。

セキュリティ対策からトイレ対策まで、小さな窓がパイロットへもたらす恩恵は非常に大きいもの。ただ、こうした「トイレ必勝術」も、ほぼ満席の状態で、しかも機内食サービスの直後などでは、かなり無力なものとなってしまいます。近いようでいて案外遠い、それがパイロットとトイレとの距離なのであります。

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