ジャンボ機が離陸するには、距離や速度、さまざまな要素が関係

<離陸距離>

駐機していたジャンボ機が動き出した場所を「出発点」とします。出発点からジャンボ機が滑走し、V1もVRも通り過ぎて離陸し、高さが約10.5mになるまでに要する水平距離が「離陸距離」です。

ボーイング747-400の場合で、約3000~3300m。

正確にはジャンボ機の「高さ」とは言わず、離陸面上という規定のポイントです。「離陸面上10.5m(35フィート)」と言います。

<V1/離陸決心速度>

V1は、トラブルがあっても離陸を中断できない速度のこと。

ジャンボ機が滑走路を滑走中に、エンジンの1つが急に故障したとします。この場合、まだV1に達していなければ、スラスト・レバーを手前に引いてエンジンの回転を最小限(アイドル)に、ブレーキをかけ滑走を中止します。対応はそれで終わりです。

これがV1の速度に達しているケースだと、そうはいきません。

V1の速度を過ぎると、滑走路の残り距離がかなり少なくなっています。ジャンボ機のスピードもかなり早くなっているので、その状態で無理にブレーキなどで飛行機を止めようとしても、急には止まれません。

ジャンボ機は止まりきれず滑走路を走り続け、滑走路の長さを通り抜けてしまいます。飛行機が滑走路の範囲を外れてしまうのを「オーバーラン」といって、墜落ではありませんが、機体に大きな負担をかけます。

ジャンボ機はエンジンが止まったくらいでは、その他の急なトラブルでも、運航に支障ないように設計されています。むしろ離陸してしまって、空の上で対処するほうが安全なようにできているのです。

<VR/ローテーション速度>

VRはジェット機だけに設定されている速度で、この速度に達したら、操縦桿を引いて機首の引き起こしを開始する速度です。

VRに加速しても主翼にとっては少し揚力が足りないのですが、ここで機長が操縦桿を引くと機首が持ち上がり、主翼に角度がつきます。それで発生する揚力だけで、ジャンボ機が地上から離れることが出来るという速度です。

この時点でのジャンボ機は秒速80mくらいで、V1からVRまでほんの数秒です。

副操縦士がV1とVRを素早くコールし、それに応じて機長が操縦桿を引く。息の合った共同作業がものをいう場面です。

大きな航空会社では、所属しているパイロットは数千人。同じ会社の社員でありながら、パイロット同士が一期一会で普通、一度きりのVRとなることは珍しいことではなく、パイロットという技術屋同士とあって、それでも問題ないのだそうです。

<V2/安全離陸速度>

紙飛行機をゆっくり投げると、すぐ落ちてしまいます。紙飛行機を飛ばすには、それなりの速度を与えないと長く飛びません。ジャンボ機も、一回地上から飛び上がったからと、そのあと速度を落としたら、地上に戻ってしまいます。

ジャンボ機は速度が足りなくてもゆっくり地上に戻るだけですが、フライト目的ですからそれでは困ります。離陸後も上昇を続け、目的地の空港まで飛び続けるためには、ある程度以上のスピードを維持しなけれはなりません。

そのために「最低限でも、これくらいのスピードが必要ですよ」という速度があり、それがV2。

一度上昇したら、V2以上のスピードにあげないと、地上に戻ることになってしまいます。しかしこの『V2/安全離陸速度』、失速速度ぎりぎりの数字ではなく、もっと余裕を持って設定されているそうです。

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